陵侑と同じ25歳 元ジャンパー黒川がプロボクサーへ
同学年に小林陵侑と高梨沙羅
余市町出身の元スキージャンパー・黒川暁稀(25)が、29日に大阪で行われるボクシング・スーパーフェザー級4回戦でプロデビューする。同学年には北京五輪ジャンプ男子個人で金、銀2つのメダルを獲得した小林陵侑(25、土屋ホーム)や高梨沙羅(25、クラレ)らがいる異色のボクサー。ジャンプでは成し遂げられなかった日本一の夢をリングの上で叶えてみせる。
スーパーフェザー級29日デビュー戦
黒川がKOデビューへ〝テイクオフ〟だ。サウスポーのファイターは「がんがん攻めて、倒せたら倒しにいくスタイルで勝ちにいきたい。将来の夢は日本チャンピオン」と、得意ブローの左ストレートをさく裂させ、初陣初勝利をつかみ取る。
異色の経歴だ。札大までは五輪を夢見てジャンプに熱中した。同学年の小林陵や高梨が世界に羽ばたくのを見て「自分も頑張ろう」と刺激を受けた。ただ「ジャンプは大学4年間でやり切って、次の仕事に向けて頑張れたら」とすっぱりと引退。約2年間、地元に戻って会社員として過ごした。
2020年の年末、地元少年団の先輩で畠山昌人会長(40)の妻・夏花さん(32)と会食。札大時代にオフのトレーニングにとジムへ通っていた黒川は、畠山会長からプロテストの受験を勧められた。黒川は「ライセンスだけ取ってみよう」と昨年2月から練習を再開した。ところが、2年のブランクは大きかった。「体が重かった。本当にトレーニングをしてなくて。お酒も飲んじゃっていたんで」と、苦笑い。それでも必死でトレーニングを続け、同4月のプロテストに合格。すると、「せっかく会長からチャンスを頂いたんで、やれるならやってみたい」と、デビューへの意欲が高まった。
普段は余市町にある実家の介護施設を手伝い、午後5時に車で1時間半をかけて札幌のジムへ通う。元々、時速90キロ近くで助走路を滑るジャンプ競技で鍛えた肉体は、「下半身とか体幹の強さがボクシングに生きている」という。現在の63キロからリミットの58.9キロへの減量も順調で、計量まで「徐々に絞っていければ」。勝利のあかつきには大好きなスイーツを自分へのご褒美にするつもりだ。
プロボクサーへの転身は、ジャンプ選手時代の仲間にはあまり知らせていない。デビュー戦を勝利で飾り、胸を張って小林陵や高梨に報告する。
陵侑からエール「絶対にKOしてもらいたい」
世界王者から熱いエールだ。スキージャンプで黒川と同学年の小林陵侑は今季W杯で個人総合優勝し、五輪では金、銀2つメダルを獲得。12日のシーズン報告会ではデビュー戦を控える黒川のことについても聞かれ「絶対にKOしてもらいたい。暁稀は小さいころからめちゃ足も速くてジャンプもうまくて。今は別の道で目標を見つけられているのもすごい。もちろん勝ってもらいたい」と期待を込めた。
■プロフィール
黒川 暁稀(くろかわ・としき)1996年4月17日、余市町生まれ。余市黒川小3年でスキージャンプを始める。余市紅志高ではインターハイに3年連続で出場。札大卒業時に競技を引退。大学時代にオフの体力づくりのために通っていた畠山ジムでボクシングを始める。昨年2月から本格的にプロを目指し、同4月にプロテストに合格した。家族は両親と妹3人と弟。