必ず甲子園へ舞い「戻」る 帽子に刻んだクラーク・エース山中が11K初完封
春季全道高校野球空知支部2回戦は、センバツ甲子園出場のクラークが6―0で岩東に勝利し、準決勝に進んだ。エース左腕の山中麟翔(3年)が甲子園後初の公式戦で登板し、被安打3、11奪三振で自身初の完封勝利。先月中旬にフォームを改良し、進化した投球を披露した。
▽春季全道高校野球空知支部2回戦(9日) クラーク6-0岩東
センバツでは九州国際大付に二回途中2失点「最悪な結果」バネに飛躍
甲子園で味わった悔しさが、クラーク・山中の成長を加速させた。以前よりも躍動感のあるフォームから放たれる低めのスライダーに、相手打者のバットは何度も空を切った。センバツ甲子園までの最速は140キロだったが、「直球の球速もキレも上がっている」と実感。自身初の完封勝利に、拳を握りしめた。
4月中旬、「上体だけで投げていて、ボールが指に乗っていなかった」と、佐々木達也部長(38)と二人三脚でフォーム改良に取り組んだ。まずは「体重移動がしやすい」とノーワインドアップに変更。リリースの高さも少し下げスリークオーター気味を意識した。「背中まで腕を持っていくように」と、体に巻き付くような投げ終わりに。腕の軌道が変わった分、攻め方の角度も左右に広がった。
相手エースを参考に配球見直し フォーム改良で快勝発進
甲子園では1回戦の九州国際大付戦に先発するも、二回途中2失点で降板。「最悪な結果だった」と猛省したが、ただ負けて帰ってきたわけではない。相手のエース左腕・香西一希投手(3年)の配球を見返して「チェンジアップに苦しめられた。2球続けて投げるとか、割合が自分とは違った」と、参考にしながら自らの配球を見直した。
今回はこれまで1試合に数球しか投げてこなかったチェンジアップを多投。外角に逃げるチェンジアップと右打者のインコースをえぐるスライダーを駆使して三振の山を築きあげた。
指揮官も目を細めた。山中の三塁を踏ませない好投に、佐々木啓司監督(66)は「5月に入ってから絶好調。練習試合では取られても1点。このままセンバツに出れていたらもっと良かった」と、絶賛した。
三回に本塁打を放った麻原草大捕手(2年)も山中の進化に驚きを隠せなかった。「右打者へのインコースのスライダーが最高だった。なんかコツをつかんだ。変化球の精度は素晴らしい。球も重くて、(受けた左手)人さし指がしびれた」。しかもこの日は風速9㍍の強風。びくともしない軸の強さを見せたエースに舌を巻いた。
帽子のつばの裏には「戻」の1文字。山中は「自信をもっていくことが重要。春は必ず優勝して、夏も優勝して甲子園へ」。リベンジの舞台に戻るまで、もう負けられない。