冴えたベテランの技!金子960日ぶり先発勝利で通算130勝目
■日本ハム5-2オリックス(11日、札幌ドーム)
「本来だったら、去年のうちに通過点としたかった」
ベテランの妙味が凝縮されていた。金子千尋投手(38)が5回1失点に抑え、先発登板では2019年9月24日のオリックス戦以来960日ぶりとなる白星をマークした。これが、通算130勝目。お立ち台で「本来だったら、去年のうちに通過点としたかったですけど、それもできなかった。シーズンの早いうちに130勝目を挙げることができて本当に良かったです。ありがとうございます」とファンの後押しに感謝した。
打者の特徴に合わせてさまざまな球種を使い分け、ストライクを先行させた。一回2死一、二塁のピンチを切り抜けると、打線の援護を受けて、快調に飛ばした。二回には左翼手の浅間がライン際の飛球を好捕。四回には三塁手の野村が三塁線のライナーに飛びついて捕った。意図を持って攻めた投球が、打撃、守備の好循環を呼び込んだ。
沢村賞を獲得したのが14年。当時は150キロを超える直球を保持し、チェンジアップを筆頭にした変化球も打者に恐れられた。力と技の両面でトップを極めた。
この日の直球の球速は140キロ台前半だった。年齢を重ね、肉体が変化していく中で、投球スタイルの変更を迫られた。葛藤はあった。中継ぎを経て先発に再転向した21年、0勝4敗の成績にとどまった。原因を見つめ直し、一つの結論を導き出した。「年齢的なこともあり、一番分かりやすいのはスピードだと思う。スピードの衰えを何とか覆したくてそこを意識しすぎた。自分と勝負していたなと」。
残像にとらわれ、過去にあらがったが、成果は得られなかった。同時にほかにも選択肢があると悟った。「もともと、そういう(力だけで抑える)タイプではないし、しっかり打者と勝負しないと僕の球では抑えられない。オープン戦が終わってからできはじめた。ちょっと遅かったですけど。きょうも自分ではなくて打者と勝負できた」。
相手打者の狙いを読む洞察力や、多彩な球種を生かしたコンビネーションなど、戦う手段も引き出しもある。若手の多い投手陣の中でアドバイザーも務める最年長右腕が強く、頼もしく、お手本を示した。