上沢が気迫の123球完投 悔し涙の万波救った「あいつの肩に助けられたこともある」
■日本ハム3-2巨人(27日、札幌ドーム)
神宮3連戦に魂動かされ「何も思わないようだったら、男じゃない」
後輩の痛みに寄り添い、男気を見せた。先発の上沢直之投手(28)がマウンドを譲らず、昨年6月18日のソフトバンク戦(ペイペイドーム)以来となる約1年ぶりの完投勝利をマークした。中5日の影響は感じさせなかった。魂を込めて123球を投げきり、ほえた。ヒーローインタビューで「九回のマウンドに上がる時の拍手は鳥肌が立つくらいうれしかったですし、ものすごく勇気が出ました」とファンに感謝した。
全てが劇的な結末だった神宮のヤクルト3連戦(24~26日)が琴線に触れた。熱い仲間たちに感化され、気持ちが高ぶった。「見ているだけで魂を動かされるすごくいい試合をしていた。その中でたくさん、リリーフが投げていたので、きょうは僕が最初から長いイニングを投げるつもりで臨んでいました。あの試合を見て、何も思わないようだったら、男じゃない」
2点リードの五回、予期せぬ事態に見舞われた。2死二塁で、巨人の中山に右前へ運ばれると、2走の生還を阻止するために前進してきた右翼手の万波が平凡なゴロを後逸。打球が転々とする間に打者まで生還し、追い付かれた。
好投に水を差す失策だったが、上沢はこの回を2失点でしのぐと、ベンチに戻る途中で、苦しげな表情を浮かべた万波を励ました。個人で伸ばしていた連続無失点イニングは「22」でストップしたが、関係なかった。「積極的なチャージはすごく大事なことだと思うし、あいつの肩に助けられたこともある。殺しにいく姿勢は大切だと思うし、ミスをなんとかカバーするのが僕の仕事。ああいう姿勢を忘れずにどんどん前に来てほしい」
ビッグボス結束に手応え「チームワークの良さ出ていて、うれしかった」
六回からギアをもう一段階、上げた。うちひしがれる万波のダメージを和らげるためには、勝つしかなかった。鬼気迫る投球で球場全体の空気を支配し、終盤4イニングは1人の走者も許さなかった。九回、120球を超えてから今季最速の152キロを計測した。
ビッグボスは、誇らしげだった。「素晴らしかったね、上沢君が。万波君がミスをしたあとに、大丈夫、大丈夫、おれに任せろというふうにね。チームワークの良さが出ていて。あれを見た時はうれしかったですね」。誰かのミスを全員でフォローし、帳消しにする―。発展途上のチームが結束し、手ごわい巨人に競り勝ったことが、大きな成果だった。
飛行機移動も含む過酷な6連戦の真ん中で、大黒柱が1勝以上の大仕事をやってのけた。ミスを悔いて男泣きした万波を救い、疲労困憊(こんぱい)の中継ぎ陣を救い、低迷するチームを救った。球威や投球術だけではないエースの資質が、全身からにじみ出ていた。