上原が思い出の広島で2年ぶり白星「投手、バッター心理わかる」二刀流効果で6回0封
■日本ハム5-1広島(1日、マツダ)
ピンチも冷静 ボス指示のチェンジアップで代打・堂林を空振り三振
表情豊かに、マウンドで躍動した。投打二刀流に挑戦中の上原健太投手(28)が「9番・投手」で先発し、今季最長の6回を投げて4安打無失点6奪三振。打席では3打数無安打だったが、2020年9月24日の西武戦以来、615日ぶりの白星を手にした。
「ほとんどの球種でストライクが取れて、余裕を持って投げられた。本当にきょうは楽しかったです」
発展途上の打撃はひとまず脇に置き、投球に全力を注いだ。一回を3者凡退に抑えてリズムをつかむと、その後は走者を背負いながらも粘ってホーム生還を死守。最速150キロの直球に、「きょうは全部良かった」という多彩な変化球を織り交ぜ、広島打線に的を絞らせなかった。
3点リードの五回には1死一、二塁のピンチを招くも、「力が入ることもなかった」と冷静だった。代打攻勢にもひるまず、まずは松山を右飛に仕留め、続く堂林はチェンジアップで空振り三振に封じ込めてガッツポーズ。前回登板した5月25日のヤクルト戦(神宮)では、五回のピンチで降板を命じられたが、リベンジに成功した。ベンチに戻ると、ビッグボスから「最後のチェンジアップは俺のサイン」と明かされ「納得して投げました」と返してグータッチした。
広島は広陵高で3年間過ごした思い出の地。4年前の18年にもマツダスタジアムで広島との交流戦に先発し、5回1失点で勝利を挙げ、特大のプロ1号アーチもかっ飛ばした。再びゆかりの地で輝きを放ち「ここの球場に勝たせてもらっているので、いい球場ですね」とさわやかな笑顔がはじけた。
本格的に打者の練習を初めて約半年。打席に立つことで、投球に好影響を与えている。「両方をやることによって、投手の心理、バッターの心理が分かる。それを考えることで、ちょっとマウンドで余裕ができる。打席に立つと、圧倒的に投手の方が有利に感じるので」と二刀流効果を口にした。
〝モノマネ名人・上原〟強打者分析し打者としても貢献誓う
左腕の特技は、強打者たちのモノマネだ。19年秋のフェニックスリーグ参加中、秋山(現3Aエルパソ)、栗山(西武)、近藤(日本ハム)ら左打者のスイングを細部まで忠実に再現し、周囲を驚かせた。当時チームメートだった平沼(西武)からは「めっちゃ似てる。何でそんなモノマネうまいんですか。どうやって打っているんですか」と打撃フォームの手本にされたほどだ。
打者の練習をハードにこなしても、投球のフォームが崩れないのは、自らの体を自在に操る術にたけているからかもしれない。「マネは好きですね。(当時の)秋山さんはインコースの真っすぐに対して、しっかり距離を取る。右足だけ前に出て、左足だけ回転させている感じ。栗山さんは足を上げた時に沈む。重心は後ろ」。抜群の身体能力に加え、目で見た動きを分析する頭の良さも兼ね備えている。
「筋疲労をどれだけ取るかとか、そういう回復にもこれまで以上に気を使っています」とけがに細心の注意を払いながら、今後は投打両方でチームの勝利に貢献できる選手を目指していく。ポテンシャルは高く、完成形はまだ見えない。マウンドでつかみ取った久々の白星をきっかけに、上原は成長のスピードを加速させていくはずだ。