ビッグボス感激の凱旋 満員の甲子園揺らした奇襲連発の壮絶死闘
■日本ハム7-9阪神(3日、甲子園)
〝ワールド〟全開 満塁でスクイズにエンドラン
水を得た魚のように、悠々と志す野球を体現した。虎のスターだった新庄剛志が日本ハムの監督として、甲子園に凱旋した。懐かしさと格別の感慨をかみしめ、発想豊かなビッグボスワールド全開の試合運びを披露した。満員の甲子園を揺らした壮絶な死闘が、示したかった一つの答えだった。
6点リードを奪いながら、ジワジワと点差を詰められ、最後は逆転負け。悔しさはあるが、喜びに似た感情もあった。「負けたのはうちの実力不足なんだけど、来てくれたファンのみんなは、ものすごい面白いゲームだったんじゃないかな。その面ではうれしいですね。10年間育てられたこの球場でいい試合はできたと思いますよ」
序盤はやりたい放題だった。連打、犠飛などで先手を取ると、三回に得意とする奇襲を仕掛けた。無死満塁から上川畑がスクイズを決め、四球の後の1死満塁では宇佐見がエンドラン。併殺のリスクが高い局面でも、お構いなしに畳み掛けた。
ベンチの意図を読み取り、選手が忠実に任務を遂行してくれたことがうれしかった。「乗ってきているから。早めにいろんな作戦で点を取ろうと思って。エンドランも決まるし、スクイズも一発で決めてくれるし」としてやったりの表情。型破りな戦術が次々にはまり、度肝を抜いた。
終盤の八回はセットアッパーの堀がつかまった。甲子園の魔物にのみこまれたのか、大山にこの日3本目の本塁打を浴びた後、安打に四球が絡んで計4失点。土壇場で踏ん張れなかった。それでも、新庄監督に悲壮感はなく「いやー、選手たちはもう幸せでしょ。ほんとに真っ黄色のスタンドで(プレーできて)、財産になると思いますよ」と穏やかに言葉をつないだ。
メンバー表交換後にはバックスクリーンへ一礼
特別な場所だった。試合前にメンバー表を交換すると、ベンチへ戻らず、ホームベースの前まで歩いた。帽子を取り、バックスクリーンに向かって一礼。「ありがとう、監督として帰ってくることができました。いい試合を見せます―という気持ちを込めてあいさつさせてもらった」。育ててくれたファンと甲子園に対するリスペクトを行動で示していた。
一瞬たりとも気が抜けないドキドキの展開にしびれた。神経をすり減らし、脳をフル回転させ、策を講じた。「今回はやられたので、次はこれの逆。スタンドのみんなを盛り上げて楽しませて、1勝1敗で三つ目にまた面白いゲームしたいですけど…心臓がやられちゃう」と冗談交じりに笑った。注目の対決はまだ第1ラウンド。残り2戦もドラマが生まれそうな予感が漂う。