「うわ、捕られるかな」谷内がプロ10年目で初のサヨナラ打 謙虚なヒーローが劇勝呼んだ
■日本ハム2-1中日(10日、札幌ドーム)
延長十一回2死から二塁打「抜けてくれ!」
歓喜の輪の中心にいたのは、堅実な守備でチームを支えてきた男だった。1-1の同点で迎えた延長十一回。2死二塁で打席に入った谷内亮太内野手(31)が、右中間へのサヨナラ適時二塁打を放ち、白熱の投手戦に終止符を打った。勝利を確信し右拳を突き上げると、次々と駆け寄ってきたチームメートにもみくちゃにされた。
プロ10年目で、初のサヨナラ打。お立ち台では涙をこらえ、「自分で決めるとか、そんなんじゃないので、なんとか後ろにつないで、最終的に勝てるようにと思って打席に立ちました。とても感動した気持ちです」と、素直な思いを札幌ドームのファンに届けた。
相手投手はこの日、最速159キロを計測した豪腕・ロドリゲスだった。「真っすぐが速いので、その真っすぐに負けないように」と、154キロの直球を狙い打ち、完璧にはじき返した。打球は中堅手の右を抜け、「自分の打球なので、うわ、もしかして捕られるかなと思ったんですけど、抜けてくれ!と思いながら走っていました」と笑顔が弾けた。
九回に代打出場し、少ない好機をものにした31歳を、新庄ビッグボスも大絶賛だ。
「谷内君のバッティングを見ていたら、何かやってくれそうだなと。練習からいつも見ている。やってくれましたね。日々努力して、常にいつでもいけるという姿勢が見えている」
「流れをチームに」ビッグボスが11日の先発確約
さらに指揮官は「2試合連続で同じバッターがサヨナラヒットを打つケースって俺はあると思う。運を持っている選手はあしたもスタメンで行ってもらって、流れをチームに持ってきてもらいたい」と、11日の先発出場を〝確約〟。「こういう一瞬のチャンスをものにしたということは、これをきっかけにレギュラーを取りにいってほしいと思います」と大きな期待を寄せた。
守備が持ち味だが、ビッグボスからは打撃も高く評価されている。今季は1番やDHで起用されることもあり、その際は「目を疑いました」と驚いたが、「内心うれしい。なんとか応えたいと思って、今後もやりたいです」と意気込んでいる。
ここまで23試合に出場し、打率こそ.205だが、得点圏では9打席に立って5打数4安打2四球2犠打と好機に強い。打席で大切にしていることは「毎回毎回、対戦するピッチャーが違うので、頭を整理して打席に立つこと。練習ではこれだと思うものを毎日積み重ねること」。地道な鍛錬こそが、谷内の全てだ。
ヒーローになっても、謙虚さを忘れない。「今までもいい打球を打った次の日は全然ダメとかあって、自分の実力不足は自分が一番分かっている。こういうことでおごらずに、しっかり足元を見つめ直してやりたい」と気を引き締めた。若いチームの中で、頼れる兄貴が背中で手本を示している。