ファイターズ
《岩本勉のガン流F論》 10勝は一流投手への登竜門
伊藤にとって、乗り越えなければいけない「分厚い壁」といえるだろう。3点のリードをもらい、投球数も100球を超えた七回。投手の勲章ともいえる10勝に手が届く場面だった。
今季一番とも感じた抜群の立ち上がりから、その勢いを持って投げ続けてきた。しかし、先頭のT―岡田に安打を許し、続くモヤに長いリーチで拾われ連打を食らった。わずかに速球、変化球ともに真ん中に寄ってしまう、微妙な変化が生じていた。
これが「分厚い壁」なのだ。早くアウトを奪いたいのに痛打を浴び、打球も不思議なくらいヒットゾーンにいく悪循環。完投、完封も期待された投球から、4失点で敗戦投手。まさに奈落の底に突き落とされた。
今季序盤、なかなか勝てなかった。しかし伊藤は自らの球を信じて投げ続け、勝敗を戻し、2桁勝利に王手をかけるまでになってきた。一流投手への登竜門でもある9勝から10勝への歩み。心配はしていない。現在の成績を残している新人右腕は必ず「分厚い壁」を乗り越え、そこからさらに加速するはずだ。
次回登板への一週間、自分を信じることに尽きる。すべてを認め、かみ砕いて再挑戦だ。伊藤、迷うことなんかないよ。(本紙評論家)