昨年全道高校テニス3冠の小笠原 プロ転向目指し渡米「まだ目標へのスタートライン」
昨年の全道高校テニスで海星の男子団体初優勝に貢献し、さらに個人シングルス、同ダブルスの3冠に輝いた小笠原陸(18)が、9月からNCAA(全米大学体育協会)ディビジョンⅡのハワイパシフィック大へ進学することが決まった。同大は昨季同ディビジョン6位の強豪。大きな夢を抱いた18歳が、将来のプロ転向のため海を渡る。
上位大学編入も視野、自身に高いノルマ
創部20年目で海星高初となる海外挑戦者だ。小笠原は「勉強も大変だったので、結果が出てうれしい。まだ目標へのスタートライン」と目を輝かせる。
NCAA加盟校は全米で2000校以上あり、ディビジョンⅠは250~280校。ディビジョンはテニスの強さだけではなく、部活動の数や生徒数の規模などで総合的に評価されるため、ハワイパシフィック大はディビジョンⅡだが、テニスのレベルでは加盟校全体でも100位以内の上位グループに入る強豪だ。
実力主義の国らしく、結果を残せば、より強い大学へ編入できるのが当たり前の世界。さらに実力に応じて、奨学金も支給される。授業料はもちろん、日本と往復する航空チケットが支給される場合もある。小笠原は今季は奨学金の支給は満額ではないが「1年か2年でディビジョンⅠの強い大学に編入。ナショナルチャンピオンシップでベスト4以上に入ればプロを考えてもいい。やるからにはそこを目指してもいい」と、キャリアアップのために自身に高いノルマを課した。
177センチ、67キロと飛び抜けて大きくはない。プレースタイルは「アグレッシブに打ちにいく。全部のプレーを混ぜていくけど、基本的には前に入って攻める。前を取るタイミングは自分の武器」と胸を張る。欧米選手と体格で劣ることは否めないが「パワーで勝てない分、コートを走れないとダメ。誰よりもコートを走ってプレーすることを意識したい。筋肉をつけて、パワフルかつ走れる選手を目指している」。週に3、4回の筋トレで渡米に備える。
日本人男子の海外挑戦は、盛田正明テニスファンドの支援を受けて米国のプロ養成所であるIMGアカデミーに留学し、その後プロ転向した錦織圭(32)や道産子の内山靖崇(29)が有名だ。近年はNCAAからプロ転向を目指す高校生も多い。世界を見渡しても男子プロツアー(ATPツアー)20勝以上のジョン・アイズナー(37)ら何人ものトッププレーヤーを輩出している。
3年間指導した海星高の菊地竜平監督(31)も小笠原の挑戦を後押しした。大学時代の21歳から24歳まで、IMGアカデミーで錦織を指導した米沢徹氏主催の「チームヨネザワ」でコーチをしており、海外に挑戦する将来有望なジュニア選手を見てきた。「小笠原はスキルはある程度、持っている。できないことが少なくて器用だし、ゲームをつくることができる。アメリカの選手はボールの重さやフィジカル、テニスの質が違う。小笠原は経験がまだ乏しいが、経験値が上がると能力も飛躍的に伸びる」と米国での成長に期待を込めた。
一番のハードル語学力もクリア「TOEFL」で73点
一番のハードルは語学だったが、テニスで培った集中力で乗り切った。主要大会が終わった昨年9月の時点で、合格に必要な英語テスト「TOEFL」で120点中70点に遠く及ばない32点だった。中学時代から米国挑戦の夢を抱いていたが、「勉強もその時からやっていれば、もっと楽だった」と、ちょっぴり後悔している。そこからはテニスのラケットをペンに持ち替え、約半年間は毎日3、4時間、多いときでは7時間も机にしがみつき猛勉強した。その結果、今年4月に自己最高73点をマーク。「精神的にきつい時期とかあったけど、ちゃんと頑張れた。最後までやりきって、テストに臨めた」と安堵した。
小笠原が通うキャンパスは、世界有数の観光都市・ホノルル市に位置する。テニス部は選手約10人に3人のコーチがついて英才教育が施される。「ワイキキビーチとか近くて、ロケーションも、ハワイの天候も最高で、あとはテニスをするだけ。ビッグチャレンジになる」。アメリカンドリームを目指す4年間が幕を開ける。
■プロフィール 小笠原 陸 (おがさわら・りく) 2004年1月27日、札幌市出身。札幌星置小1年時に、同市のあけぼのテニスクラブで競技を始める。海星高3年時の全道高校で団体、個人単、同複の3冠を達成。全国総体では、同シングルスで2勝して32強入り。家族は両親と妹。177センチ、67キロ。右利き。バックハンドストロークは両打ち。好きなプレーヤーはグランドスラム20勝のロジャー・フェデラー(スイス)。