北浦プロ5年目の初セーブ 母への感謝が活躍の原動力に
■日本ハム2-1楽天(29日、楽天生命パーク)
試合前に「北山と北浦で抑え」準備は万端
後半戦最初の試合でクローザーを務めたのは、プロ5年目の伏兵だった。2-1と1点リードで迎えた九回1死から、北浦竜次投手(22)がマウンドへ。2死後にピンチを招くも無失点で締め、プロ初セーブをマークした。
「けがやコロナもあって、(2軍にいる期間が)すごく長くなってしまった。1軍に上がった時は最高の状態で投げられるようにしておこうと思っていた。本当に楽しく投げられたので良かったです」
北山の後を受け、イニング途中からの登板だったが、試合前から「北山と北浦で抑え」と告げられていた左腕は準備万端だ。まずは強打者の浅村を渾身の150キロ直球で空振り三振に仕留めた。続く島内、茂木に出塁を許し、2死一、二塁。長打で逆転サヨナラの危機だったが、鈴木大の中前に抜けようかという打球を遊撃手の中島が超ファインプレーで好捕し、遊ゴロでゲームセット。事前に「守るから」と背中を押してくれた先輩の〝宣言通り〟の好守に「信じて良かった」と声を弾ませた。
幼少期から母・里美さんが指導 19年の初勝利球は両親に手渡し
親への思いが、野球に打ち込む原動力となっている。2019年7月27日の西武戦でプロ初勝利を挙げた際、北浦は実家の両親に勝利球を飾るための箱だけを送り、肝心のボールは送らなかった。ソフトボールで国体出場経験もある母・里美さんからは当然「中身は?」と聞かれたが、理由があった。
里美さんには幼少期から野球の指導を受けてきた。しかし、プロ入り後はアドバイスをもらっても「コーチに言われていることがあるから」と冷たい態度を取ってしまっていた。それでも、感謝の気持ちは心にずっとある。だからこそ「やっぱり(ボールは)直接渡したい。母は財布が好きなので、一緒にプレゼントできたら」。最初に渡した空箱の中には、親を喜ばせたいと思う左腕の優しさが込められていた。
その後、しっかり記念球とブランドものの財布を届けた孝行息子。この日のウイニングボールは「今回は自分でキープしておきます」と笑ったが、晴れ舞台で見せた好投が、両親への何よりのプレゼントになったはずだ。
離脱者続出で苦境のチーム「僕らがやっていかないと」
今季はまだこれが3試合目の登板。新型コロナやけがでの離脱者が続出する中で、巡ってきたチャンスをものにした。チームの後半戦白星発進に大きく貢献し「人がいない状況で、僕らがやっていかないといけない。すごいアピールになるなと思ってマウンドに立った」と胸を張った。
1軍定着へ向け、勝負はこれから。「こうやってもらったチャンスをしっかり生かして、後半戦の一戦一戦をしっかりやっていきたい」と先を見据えた。杜の都で挙げた初セーブをきっかけに、必要不可欠な戦力へと成り上がってみせる。