コロナ復帰初戦からBIGBOSSマジックさく裂!「やっぱり締まるね。オレが入ると」
■日本ハム2-1楽天(29日、楽天生命パーク)
エンドラン、重盗仕掛け相手翻弄
変幻自在の用兵で楽天をのみ込んだ。コロナ陽性による自宅療養期間を経て戻ってきた新庄剛志監督(50)が、復帰初戦でマジックをさく裂させた。代名詞となっているエンドラン、重盗を大胆不敵に仕掛け、1点リードの九回には斬新な方程式を確立。経験と感覚に裏打ちされた勝負手を白星に結びつけた。
九回2死一、二塁。遊撃手の中島がダイブしてセンター前に抜けそうなゴロを処理し、二塁へ転送。息をのむような試合が終わった。ビッグボスは興奮と喜びを隠さなかった。「楽しかったね。抜かれたら逆転でいい。もう勝ちか負けか。勝負」とラストのピンチに触れ「やっぱり締まるね。オレが(ベンチに)入ると」とちゃめっ気たっぷりに笑った。
五回まで打線が沈黙したが、六回先頭の中島が安打で出塁すると、空気が変わった。1点を追う展開で打席には今川。初球にセーフティーバントの構えを見せ、2球目から続けてエンドランを仕掛け、ファウル。カウント2―2で再びエンドランのサインが出ると、打球を右前に運んだ。相手の悪送球も絡んで同点。その後、近藤の適時打で勝ち越しに成功した。
指揮官は畳み掛けた。1死一、三塁で清宮。警戒レベルマックスの状態で重盗を敢行した。相手の網に掛かり、失敗したが、驚きの選択も視野に入れていたという。「清宮くんのところで本当はスクイズを出そうと思った。それも面白いかなと思ったんだけど、やっぱり一、三塁で何か仕掛けたいなと。スクイズではちょっと地味かな」。勝つための作戦にNGはない。
九回1死、浅村の場面で北浦投入「右打者にガンガンいけるから」
1点リードの九回には、打者1人を打ち取ったところで北山を交代させた。抑え未経験の左腕・北浦にスイッチし、一発が怖い右の浅村にあえてぶつけた。明確な理由があった。「山川くん(西武)と対戦した時のイメージがあって。右バッターに対してガンガンいけるから」。そんな特性をくみ取り、ちゅうちょせずに大抜てきした。
この日は浅間、高浜がコロナ陽性判定を受け「感染拡大防止特例2022」を適用して抹消された。代替指名選手として宮西、古川裕、有薗、梅林を急きょ登録。望月、阪口も昇格。支配下の野手は高卒ルーキーまで総動員した。離脱者が相次ぎ、チーム編成が困難を極めている。
ただ、ビッグボスは下を向かない。「故障者もたくさん出てるし、コロナも。うちのベンチは少ない。でも、こういうメンバーで勝ちたいなという気持ちがめちゃくちゃ強いから。逆に楽しいね」。思い通りにならないからこそ、知恵を絞り、工夫する。逆境に燃える男が、進むべき道を明るく照らす。