【西川薫】夏の甲子園に幕。道内外で輝く球児たちに今後も注目
〝白河の関越え〟で思い出す大旗の海峡越え
今年の夏の甲子園は、仙台育英が東北初の深紅の優勝旗を手にして〝白河の関越え〟を成し遂げました。2004年、駒大苫小牧が北海道勢として初めて優勝旗を津軽海峡越えさせた時を思い出します。それまでは、記者の父が北海の遊撃手として出場した1963年春の選抜甲子園で成し遂げた準優勝が道勢の最高成績でした。歴史的瞬間を甲子園球場で目の当たりにできたのは、幸運としか言い様がありません。仙台育英の選手たちは、この先「あの仙台育英の選手」という肩書がついてまわることになりますが、それも含めてそれだけ大きな事を成し遂げたと、日ごとに実感がわいてくるでしょう。
駒大苫小牧の初優勝当時は、私はまだ記者職ではなく、会社の先輩と当日の朝に新千歳空港でキャンセル待ちしてなんとかチケットをゲット。航空会社の搭乗券販売窓口で隣にいたおじさんが「甲子園まで1枚」との一言に、思わず吹き出してしまったのを覚えています。普段、飛行機に乗らないような人にまで、駒大苫小牧のフィーバーぶりが大きな影響を与えていたのです。その後、担当記者として春夏1度ずつ聖地で高校球児を取材する機会に恵まれました。あれから18年。ここ数年はコロナ禍の影響で、現地で対面取材をすることは出来ず、選手の息づかいや高揚感などに直接触れる機会がないのは残念です。ただ、この夏出場した旭大高と札大谷、どちらも見応えのある試合で、勝利の可能性を十二分に感じさせてくれる戦いでした。道勢として6年ぶりの夏の甲子園勝利は果たせませんでしたが、胸を張ってもらいたいです。
様変わりする新チーム、次の栄冠はどこへ
甲子園は終わったばかりですが、来春の選抜甲子園をかけた新チームの戦いはもう始まっています。9月には秋の支部予選が道内各地で開催されます。8月24日には全道10支部のトップを切って、札幌支部で組み合わせ抽選会が行われました。夏に下級生として出場し経験を積んだチーム、ほぼ3年生だけで戦い、実戦経験に乏しいチームなど、秋の予想は非常に難しいもの。試合を戦うごとに成長していくのが目に見えて分かるのが秋季大会です。次の栄冠はどこの高校に輝くのか、開幕前から楽しみです。
8月中旬、全国中学の軟式野球が札幌で開催されました。準優勝で惜しくも敗れた明徳義塾中には、3人の道産子選手がベンチ入りしていました。明徳義塾中にはここ数年、毎年北海道から野球留学する小学生がみられます。2017年の全国学童軟式野球で北海道勢として、初優勝した「東16丁目フリッパーズ」から2人の選手が進学。1人は主将として、そのまま高校へ進学。さらに昨年の中学3年生も2人の道産子がプレー。現在は明徳義塾高で練習に励んでいるそうです。
道内の中学から道外の強豪高への進学が当たり前になってきています。昨夏の大阪桐蔭のエース・松浦慶斗投手(日本ハム)は、父が北海出身。宮城生まれで、中学まで旭川育ち。今年の甲子園では、京都国際の小林春輝遊撃手(2年、札幌新琴似シニア)が出場。地方予選で敗れた、帝京長岡の茨木秀俊投手(3年、札幌東シニア)、茨城・霞ケ浦の渡辺夏一投手(3年、札幌北シニア)ら。甲子園で輝く彼らを見たかったです。また、ベンチ入りこそ果たせていませんが、この秋から活躍が期待される道産子選手も道外に複数います。来春の甲子園で、かつての球友たちと対戦する可能性があるなんて、ロマンに満ちあふれています。
運命のドラフト会議を待つ豪腕トリオ
また、この夏、道内を沸かせたプロ注目の投手たちの進路にも注目が集まります。南北海道大会で4強入りした、知内の148キロ左腕・坂本拓己投手、苫小牧中央の151キロ右腕・斉藤優汰投手、東海大札幌高の150キロ左腕・門別啓人投手の3人がプロ志望届を提出する方向。近日中には、日本高野連のホームページにプロ志望届の提出者一覧が公開されるはずです。今年のドラフト会議は10月20日。運命の1日も目が離せません。
いまだコロナ禍は先が見えませんが、スポーツの力は人々に元気を与えます。1日も早くスタンドに声援が戻り、球児のプレーを全力で応援出来る日が待ち遠しいです。