立命館慶祥が初の4強〝隠し球〟渡辺が涙の3失点完投 秋季全道高校野球
▽秋季全道高校野球準々決勝 立命館慶祥7-3白樺(3日、札幌麻生)
準々決勝4試合が行われ、立命館慶祥と函大柏稜が秋季大会初の準決勝に進出。2連覇を狙うクラーク、2年前の王者・北海も順当に進み、4強が出揃った。立命館慶祥は、全道で初先発した渡辺翔悟投手(2年)が白樺の強力打線を相手に気迫の投球で自己最長の9回155球を投げて3失点完投。7―3で勝利し、札経済時代を含め、創部84年目で初めて甲子園につながる大会で準決進出を果たした。4日から5日間の休養日を挟み、9日に準決勝、10日には決勝が行われる。
「球速なくてもキレで押せる」直球とスライダーのみで勝負
キタキツネ打線の援護を受けた渡辺が最後まで投げ抜き、マウンドで渾身のガッツポーズ。正津葵捕手(2年)と涙を流して抱き合った。「チームの1勝のために全力でやるという気持ちでいった。とにかく勝ててうれしい」と声を弾ませた。
豪打が伝統の全道常連・白樺を相手に、横山蔵人監督(61)は「隠し球」と呼ぶ背番号11を先発に起用した。複数の変化球を操る投手が現代のトレンドだが、渡辺がこの試合で投じた球種は最速135キロの直球とスライダーのみ。渡辺は「真っすぐのキレを追求していけば、球速はなくてもキレで押していける」と、ボールの回転軸や回転数にこだわった。さらに腕の振り方を変え、スライダーの曲がりに違いを持たせた。3失点したが連打はなし。指揮官は「期待以上の粘りを見せてくれた」と、最後まで渡辺を信じ続けた。
横山監督は昨春に定年で勇退したが、学校事情で今年7月に“再登板”した。初の4強入りに「感無量。なかなか打ち破れなかった壁を破ることができました」と満面の笑みを浮かべた。
新チームでは「打って走って点を取る」をモットーに、この試合の犠打は0。「バントをして1アウトをあげるのはもったいない。セオリー通りで今までは勝ち進むことができなかった」と考え方にも変化が生まれた。
準決勝では2連覇を狙うクラークと対戦する。「きょうの完投は自信になる」と渡辺。殻を破った右腕が、初のタイトルを目指して登板を待つ。