斎藤佑樹11年間のプロ野球人生にピリオド「野球のおかげで幸せな気持ち」
佑ちゃん、北海道に夢をありがとう―。今季限りで現役引退することを発表した日本ハム・斎藤佑樹投手(33)が1日、千葉・鎌ケ谷の2軍施設で取材に応じ、現在の心境を語った。引退決断の理由について「一番は体のこと」と説明。早実高時代に甲子園で「ハンカチ王子」として親しまれ、早大を経て10年ドラフト1位で入団。プロ入り後は度重なるけがに苦しんできた右腕が、11年間の現役生活に別れを告げた。
背番号1のユニホームに身を包んだ斎藤の表情は、どこかすがすがしかった。時折、言葉を詰まらせながら、一言一言かみしめるように現在の心境を口にした。
「いろんな思いがあるんですけど、一番はファイターズというチームで11年間、最高の仲間とプレーできたことがとても幸せな気持ちでいっぱいです」。気遣いの男らしく、最初に発した言葉は仲間への感謝だった。
満身創痍の状態で戦っていた。引退決断の理由は「一番は体のこと。肘も体も股関節も腰もすべてです。いまどこか1個治るならと言われても(答えるのが)難しい」。野球を続けたくても、体は悲鳴をあげていた。
昨年10月に右肘靱帯(じんたい)を断裂。「肘のけがをしたときに、今年1年で結果が出なかったらという思いでやってきた」。7月の2軍戦で復帰を果たしたが、ここまで1軍登板はなく、1日に最終的に決断し、吉村GM、チームメートらへ今季限りで引退することを伝えた。
結果を出すため、必死に野球と向き合う姿があった。2軍での登板前には、データで相手打者を研究するのがルーティンだった。「そういうのをやらないと、なかなか打ち取れないから」と全力を尽くした。
この日は2軍の練習に参加し、ブルペンで投球練習。今後は、引退会見などが開かれる見通しだ。「やっぱりファイターズだったり、自分がいままで育ってきた環境に恩返しをしたい。決めた以上、前だけを見て進んで行こうかなと思います」
トレードマークの爽やかな笑顔を浮かべ、斎藤は新たなステージへ進む。
(中田愛沙美)
■佑ちゃんTALK
―栗山監督に報告は
「いままでありがとうございましたと伝えました」
―監督からは何と
「ぼくの心にとどめておきたいんですけど、お疲れさまと言われました」
―引退決断前に相談は
「頼る人がファイターズにたくさんいたので、いろんな悩みとか聞いてもらった。最終的な決断は自分でしました」
―決断までの葛藤は
「もちろんありましたけど…。決めたからには、ファイターズを応援するということしか考えていないです」
―いまの気持ちは
「まだ、ほっとはしていないですね」
―自身にとって野球とは
「小学校1年生から始めていまに至るまで、本当に野球のおかげでつながった人がたくさんいる。そのおかげでいま幸せな気持ちでここに立っていられる。そういう人との関係をつくり上げてくれた。とても大事なスポーツです」
■記者は見た
同世代の記者が、斎藤を一言で表すなら「ナイスガイ」だ。球場で会えば「元気?」と気軽に話しかけてくれ、互いの近況を報告しあう。「取材に来てくれてありがとう」と逆にこちらが感謝された。
高校時代から注目され、全国的に名の知られた存在。近年はなかなか結果が出ず、斎藤の記事が出るとインターネット上では批判コメントが書き込まれた。もちろん、本人も目にしていた。「しゃべらないにこしたことはない。絶対ぼろが出る」。そう言いながらも、嫌がることなく取材に応じてくれた。
答えにくい質問は「記者の人たちも頑張って聞いてきてくれている」と理解。「しゃべらないとこういう場をセッティングしてくれている広報さんの顔をつぶすことになる」。自分のことよりも、周囲の人たちを気遣ってきた。
いつも記者との会話の大半は雑談だった。最近は、ソニーの一眼レフカメラで風景写真を撮るのにハマっていると聞いた。「今度、写真を見せてあげるよ」。引退はやっぱり寂しいけれど、その約束が実現する日を心待ちにしている。
(中田愛沙美)