【西川薫】異例づくしの運命の1日 道産子豊作のドラフト会議
北海道関係8人が指名受ける
今年のプロ野球ドラフト会議では、北海道関係で8人が指名を受けました。北海道関係のプロ志望届提出者は21人(独立リーグ希望を含む)。異例づくしの運命の1日となりました。
広島が1位指名を事前公表した斉藤(苫小牧中央高)
道内で一番の話題は、やはり広島が1位指名を事前に公表した、岩見沢市出身の斉藤優汰投手(苫小牧中央高)でしょう。記者はアマチュア野球の取材に携わってから10年ほどになりますが、道産子高校生が事前に1位指名の公表を受けたのは記憶にありません。32年前、記者が高校2年生の時の春、留萌から軟式野球で全国大会に出場した140キロ近い速球を投げる投手が入学。するとすぐにスカウトが飛んできたのを記憶しています。当時で140キロは剛速球投手。いまは高校、大学に150キロ台を投げる投手がざらにいるので、当時からすると信じられませんね。今回、指名された8人の中で、高校時代に甲子園に出場した選手は0人。全国にスカウト網が発達してきたことも指名の多さにつながっているのかもしれません。
北海道出身者が広島から支配下で指名されたのは、1974年に芦別市出身の高橋慶彦氏(65)以降、長い間、縁がありませんでした。投手としては初めてです。今回のドラフト当日は、道内メディアのみならず、広島の新聞、テレビ局もこぞって集結。注目度の高さを物語っていました。
斉藤投手へのドラフト前日の取材では、本人がまだ一度も行ったことのない、広島の食べ物について話題になりました。「牡蠣は?」「苦手で…」「じゃあ、お好み焼きは?」「小学校の時にレクで作ったお好み焼きがあまりおいしくなくて、良いイメージはないです」と苦笑いしてました。ドラフト翌日、新井新監督が直接指名あいさつに訪れた際、「広島の寮の食事は12球団で一番おいしい」と太鼓判を押していました。向こうではたくさんの広島名産を食べて、体づくりに励んでもらい、地元のファンの心をつかんでもらいたいです。
菊地(専大―札幌大谷高)はロッテ 史上初の道産子ダブル1位
さらに今回のドラフトは、史上初の道産子ダブル1位指名が飛び出しました。斉藤投手と並んでロッテから1位で指名された専修大の菊地吏玖投手(苫小牧出身、札幌大谷高卒)です。ロッテからの1位指名は、1973年に道産子初の高校生1位指名を受けた佐藤博正投手(札幌商業卒)以来49年ぶり。専修大は東都2部ですが、今年7月のハーレムベースボールウイークで菊地投手は日の丸を背負って欧米の強国を相手に存在感を示していました。ドラフト事前取材では特にお気に入りの球団はないと話していましたが、日本ハムと同じパ・リーグのロッテということで、入団した際には1日でも早く北広島の新球場に凱旋し、日本ハム相手に投げる姿を見てみたいです。
阪神・門別(東海大札幌高)、ヤクルト・坂本(知内高)…楽しみなプロでの道産子対決
指名を受けた道内関係8投手のうち半分がセ・リーグでした。道産子としては56年ぶりに阪神から指名を受けたのが日高町出身の門別啓人投手(東海大札幌高)。富川中時代に外部コーチとして門別を指導していた金村佳嗣さんは、記者の母校・北海高のライバルである東海大四高野球部OBで同い年。金村さんの長男・航成さんは、2015年選抜甲子園準Vメンバーという、筋金入りの東海ラインです。門別投手が中学3年の冬、金村さんから記者に「怪物くんが、東海に行きます」という内容のメッセージをもらい、入学当時から注目していました。東海大札幌高のユニホームは縦のストライプ。同じタテジマの阪神のユニホームも似合うこと請け合いです。ほかにも、札幌市出身の茨木秀俊投手(帝京長岡高)も阪神から4位。元日本ハムの芝草宇宙監督〝一期生〟として、入団すれば同校初のプロ野球選手の誕生です。奥尻島出身の坂本拓己投手(知内高)はヤクルトから4位指名。奥尻島には小学校も中学校も野球チームは1つしかなく、大会出場のたびに海を渡らなければいけないなど、決して恵まれた環境ではありませんでした。ただ、野球がうまくなりたいと知内で才能を伸ばし、夢を叶えました。離島のエースが将来、ヤクルトのエースにも成長してもらいたいです。斉藤、門別、茨木、坂本の4人が、いつか国内最高峰の舞台で対決することを楽しみにしています。
今回指名されなかった北海道関係の選手は13人。注目していた東海大札幌高の唐川侑大捕手は指名漏れという結果に。中学時代は、硬式野球で道内、世代NO.1右腕として活躍していましたが、高校では捕手・外野手が中心。投手としては145キロの真っすぐが魅力でした。個人的には、今後も野球を続けるのであれば再び投手としてプロに挑戦してほしい存在です。
指名の順位というものは、シーズンが始まるまでのもの。プロ入り後は実力が全ての世界です。その中で自らの実力で成り上がってもらいたいですし、彼らの活躍はきっと家族や友人、学校関係者、OBらの活力にもつながるはずです。北海道を巣立っていく金の卵たちに心からのエールを送りたいです。