杉谷 泣き、笑い、前へ F一筋14年の人気者が引退会見
11月5日侍強化試合で最後のユニホーム姿
日本ハムの杉谷拳士内野手(31)が28日、札幌市内の球団事務所で会見し、現役引退を表明した。テストを受けて入団し、ファイターズ一筋で14年間プレー。ファンに愛された人気者は泣いて笑って感謝を伝えた。今後は立場を変えて野球界、スポーツ界に恩返ししていくという。11月5日、侍ジャパンと戦う強化試合(東京ドーム)で最後のユニホーム姿を披露する。
漠然と思い描いていた引き際だった。レギュラーに定着できなかったが、貴重なユーティリーティープレーヤーとして存在価値を高めた。2019年の国内FA権取得が一つの転機。「球団のいろいろな人に相談して『最後はファイターズのユニホームで終わりたい』と(伝えていた)」
今季は51試合に出場。打率.165にとどまった。新庄監督には「内容が良いから大丈夫。このままでいいよ」と励まされたが、「何かが足りない」と自覚していた。オフの自主トレで生活を共にした野村、清宮の成長も間近で見てきた。世代交代が脳裏をよぎった。
「ファイターズの未来を考えた時に、選択をミスらないようにしようと思いました。J(野村)や(清宮)幸太郎。こうした選手がどんどん大人になっていく。その時に、もっともっと強いファイターズになるんじゃないか」
「父のような存在」栗山前監督登場に大号泣
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シーズン終了後、「父親のような存在」と表現する栗山前監督と食事した。将来について相談する中で、腹は決まったそうだ。会見が一区切りすると、そんな恩師が花束贈呈でサプライズ登場した。「長い間、本当にお疲れさまでした」と肩を抱かれると、杉谷は大号泣した。
当然、湿っぽいままでは終わらなかった。チームメートに引退を報告した際のやりとりを再現。素っ気ない反応だった野村には感謝のメッセージを催促し、軽いノリで返信してきた吉田の疑問は放置したことを明かした。軽妙な話術を駆使し、笑いを巻き起こした。
今後は世界のスポーツ学び「恩返しを」
今後のビジョンは壮大で、本格的に英語学習も開始している。「国内外問わずにいろんな形でスポーツの勉強をしたい。マーケティング、育成にも興味があります。アメリカなら野球、バスケ、ヨーロッパはサッカー、オーストラリアはクリケット、ラグビー。視野を広げてスポーツ界に恩返しをしようと思います」。ファンの心をつかんだ男のセカンドキャリアには、たくさんの夢が詰まっている。
《杉谷TALK》
「寂しい気持ちがある半面、ワクワクしている」
―14年間は長かったか
「正直、寂しい気持ちがある半面、ワクワクしている自分もいる。でも…長かったですね」
―プロ通算777試合出場。印象に残っている試合、シーンは
「一番は大きいけが。両打席でホームランを打った時は人生で一番うれしい日だなと思いましたが、打席で有鈎骨(ゆうこうこつ)を折った時の音を今でも覚えています」
―両親にはどのように報告したか
「父親はボクシングをやっていて勝負事にすごく厳しい方でした。一言目に、野球選手は一度終えます。未来に向かって前進しますと(伝えた)。普段は口数が少ないですけど、よく頑張った、お疲れさまという言葉をいただきました。母親は帝京高時代から朝4時に起きてごはんを一升炊いて、お弁当を作ってくれて。ありがとうという言葉は伝えたんですけど、何を言われたかは、覚えていないです」