《人ほっとコーナー》田部井祐介さん(35) 札国際大女子サッカー部監督
博士号を取得した〝ドクター〟監督
〝ドクター〟監督が奮闘中だ。今年4月にコーチング学の博士号を取得し、ドクター(博士)となった異色の指揮官は現在、1~3年生までの部員7人で活動を続け、来春の本格スタートに向けて準備を進めている。
「1年目はまず試合ができる人数が揃えばいい。3、4年かけて札大さんと良い試合ができれば」。道内の大学で唯一、女子のサッカー部がある札大の名前を出し、目標に掲げた。
女性がサッカー続ける受け皿に
チームは今年7月に創部。初代監督就任後の8月から道内の高校を回り始めた。しかし、聞こえてきたのは、約半数が高校で競技を止めてしまう現実。「もう少しサッカーを続けたいとか、大学で勉強してみたい領域があるのであれば、その受け皿に」と、道内女子サッカー界の活性化を願っている。
福岡県出身。東海大五高では元日本代表のMF藤田直之(鳥栖)ら3人のJリーガーと同期だった。ところが大学で英文学を教えていた父の影響もあり、高校を1年で中退し、プロを目指してサッカーの母国・英国へ留学。結局、選手としての夢はかなわなかったが、大学でスポーツ科学を専攻するうちに指導者への興味が徐々に湧き出した。
「私生活や人間関係も重要」
帰国後、筑波大大学院へ。博士課程に進みながら同大女子サッカー部のコーチ、ヘッドコーチを歴任した。チームのモットー「信頼、向上、徹底」は今も大切にしている。さらに「私生活や人間関係もパフォーマンスを発揮するには重要」と、サッカーの勝ち負けだけではなく、自ら考え行動する力、自分と仲間を信じる力を大事にし、自主性を持った人材育成を目指している。
筑波大では「トップダウンではなく、学生が主体となってボトムアップする形で活動してきた。学生も大変だと思いますが、何かを一つからつくるのはいい経験になる」。札国際大では、どんなチームを創り上げるのか、今から楽しみだ。
■プロフィール
田部井 祐介 (たべい・ゆうすけ) 1987年5月19日生まれ、福岡県出身。小学校3年の時に競技を始める。東海大五高(現・東海大福岡高)を1年で中退し、英国・ブラッドフィールド高へ語学勉強を兼ねて留学。英国・ラフバラー大卒業後の2010年春に筑波大大学院修士課程に進み、12年から博士課程へ。13年に同大女子サッカー部のコーチ、へッドコーチを歴任。17年に日本サッカー協会B級コーチライセンスを取得し、U―16女子日本代表のテクニカルスタッフにも就いた。20年春に札国際大の講師に着任。今年4月にコーチング学の博士号を取得した。現役時代のポジションはCB。182センチ、76キロ。右利き。家族は妻と長女。