ミシャがW杯戦術指南 日本代表にエール「どこの国とも互角以上に戦える力ある」
広島時代に師弟関係「もしかすると私の影響が彼のサッカー観に加わったかもしれない」
サッカーW杯カタール大会開幕まで10日を切った。4年に1度行われるサッカーの祭典を前に、北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロビッチ監督(65)が、過去に師弟関係だった森保一監督(54)にエールを送り、日本代表の戦いについて自身の思いを語った。
今大会で日本代表を率いる森保監督は、ペトロビッチ監督がJ1広島を指揮していた2007年の途中に同コーチに就任し、09年末まで約2年間、共に戦った。「森保監督は現役引退後に指導者の道を歩み、私と共に仕事をする時期があったが、当時もコーチとしての仕事をしっかりとやっていた。非常に勤勉でまじめで、素晴らしいパーソナリティーのある方だった。彼はすでにしっかりとした自身のサッカー観を持っていたが、もしかすると、その中に少し私の影響が彼のその後の監督としてのサッカー観に加わったかもしれない。物事をよく考えて行動するタイプで、その中で素晴らしい判断を重ねてきた」と人柄を語った。
ここまでの森保監督の仕事ぶりについては「広島監督時代にいい仕事をして結果を残して、代表監督になられた。代表でも素晴らしいチームをつくって、しっかりと予選を勝ち上がり、W杯本戦を戦うところまで来ている。本当に素晴らしい仕事をされていると思う」と称賛した。
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「自分たちはやれる」という思いを持って戦うことだ
その森保監督がいよいよW杯本大会の舞台を迎える。「W杯本戦は世界の各地域の予選を勝ち抜いたチームが戦う。ここからは世界のトップオブトップの戦い。決して簡単ではないが、日本代表が、そして森保監督が素晴らしい結果を残せるよう心から応援している」とエールを送った。
日本代表が戦うグループEには優勝経験があるドイツ、スペインといった強豪国が名を連ねる。「日本代表はどこの国とやっても互角以上に戦える力はある」と実力を評価した上で、「問題はメンタル。大きなプレッシャーがかかる中で、どれだけ気持ちを強く持てるか、自信を持って戦えるかというところは大事。日本の問題はその自信の部分ではないか。『自分たちは十分にやれる』という思いを持って戦えるかどうか。多くの日本人が過去の結果だけを見たときに、勝手に自分たちが格下だと意識してしまうことがメンタル面に作用してしまう。そういったところでは気持ちの強さが大事。『自分たちはやれる』『どこのチームとも戦える』という思いをしっかりと持って戦うことだ」と語った。
日本に17年いる中で今回の代表は一番質が高い選手が揃っている
初戦(11月23日)の相手はドイツ。W杯での実績は相手が上だが、「日本に17年いる中で、今回の代表は過去に比べても一番、質が高い選手たちが揃っていると思う。それは海外で活躍する選手が過去に類を見ないくらい多いからだ。今は日本人の選手がブンデスリーガ、プレミアリーグ、セリエA、リーガ・エスパニョーラ、リーグ・アンなど、各国のトップリーグで試合に出ており、それが日本代表選手の質の高さを表している。MF遠藤航やMF鎌田は日々、ブンデスリーガのトップ選手たちと戦い、得点も決めている。DF吉田やDF板倉も同じブンデスリーガで十分やれている。(ドイツ相手でも)十分に戦えるということは彼らが証明している」と日本人選手のレベルアップを評価している。「決して日本代表の選手が見劣りしているわけではない。メディアも含めて、日本人の多くの方々が『ドイツは強い』『ドイツの選手はレベルが高い』『日本代表は格下だ』と思っているが、そう思わない方がいいと私は思う。ブンデスリーガの中でドイツ代表の選手と戦っても、遜色ない活躍をしている日本人選手がいるわけだし、ポルトにもMF守田が行ってチャンピオンズリーグで活躍している。そういった選手たちが海外で数多くプレーしているというのは、その選手たちが集まったときに、ドイツと戦っても十分やれるということを証明している。日本代表でプレーする選手自身も、そう思っているだろうし、われわれもそう思うべきではないか」と、世界の強豪相手にも恐れず、自信を持って戦うべきだと強調した。
日本人のモビリティ、連動性を出せればドイツとも十分渡り合える
では、ドイツとはどのように戦うべきか―。「(ドイツは)非常に規律があるチーム。フィジカル、運動量、球際の強さ、体の大きさを生かしたセットプレー。そして彼らのメンタリティー。彼らはどんな劣勢に立たされても、どんな状況に陥っても『最後は自分たちが勝つんだ』という強いメンタリティーを持っている。そういう相手に対して隙を見せてしまったらやられるだろうし、弱気になれば食われてしまうだろう」と語り、それに対しても日本は「『自分たちは全然やれる』『こういう相手でも戦って勝てるんだ』という強い気持ちを持って臨むことだ。恐れる気持ち、怖がる気持ちが一番の敵だ。そういう部分での気持ちの持っていき方、メンタルの強さを持って、堂々と戦えるかということになってくる」と、ドイツに負けないメンタリティーを持つことの重要性を説いた。そして「それぞれのチームには強さと弱さがある。ドイツは規律があり、フィジカルの強さを生かした力強いチーム。反対に日本は非常にモビリティがあり、連動性のある動きができるチーム。そういった部分はドイツに対して十分に強さが発揮できる。そういった日本人のモビリティ、連動性をしっかりと持って戦えば、ドイツのようなチームにも十分に渡り合っていける」と、日本代表のストロングポイントを生かして戦うことで勝機を見いだせると語った。
最終戦のスペイン戦では攻守の切り替えが非常に重要になる
11月27日のコスタリカ戦を経て、最終戦は12月1日のスペイン戦だ。「ドイツと対戦するのとスペインと対戦するのは全く違う」と語り、スペインのスタイル、そしてその戦い方について「スペインはしっかりとボールをつなぐ、ボールを全体で動かすチーム。反対にボールを奪った後にスペースが生まれやすいので、どこでどういう形で守備をして、どこでボールを奪って攻撃につなげるか。攻守の切り替えのところが非常に重要になってくる。ドイツとの対戦ではボール支配率は五分五分、もしかすると日本の方が持てるかもしれない。逆にスペインが相手だとボールを持たれる時間が長いだろうから、持たれたときにどの辺で守備をして、どの辺でボールを奪うかという狙い所を持って、奪ったボールをどう攻撃につなげるか。それは私が言わなくても森保監督はわかっていると思うが」と説明した。
今大会の日本代表26人の中には、かつて浦和時代の2016年に指導したMF遠藤航(29)が選ばれた。彼へのエールを尋ねられると、「特別、私から彼に贈りたい言葉はない。彼は私の元で育った選手であり、私が彼に言う言葉は彼の中に染みついているだろう。だから彼には『グッドラック』としか。悔いの無いように楽しくW杯を戦ってほしいなと思っている」と話した。
代表監督への興味は今は無い。日々選手とチームをつくるのが自分に合う
代表で指揮を執ることに興味があるか問われると、「今のところは無い。代表監督になると、選手の視察やスポンサーへのあいさつ回りといったサッカーの現場以外の仕事や、代表合宿をやるときに誰を呼ぶのか、どこでやるのかといった計画を立てることが仕事になってくると思うが、私はどちらかというと、日々、選手たちとグラウンドの上で練習を重ねながらチームをつくっていく仕事の方が自分に合っている」と、札幌を含む日本の3クラブで攻撃的サッカーを根付かせてきた指揮官らしい答えが返ってきた。
優勝候補は―ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、日本
最後に、今大会の優勝予想をしてもらった。「フランスを見るとけが人が多いのが気になる。ドイツは常にドイツだ。彼らは短期の大会で必ず結果を残してきた過去がある。ベルギーはけが人が多い。イングランドはそこまで強いかなという感じ。私の予想はブラジル、アルゼンチン、ドイツ。4番目に日本だ」。