夏季スポーツ
2022/11/28 23:09

≪人ほっとコーナー≫陸上十種競技でパリ五輪を目指す右代啓欣さん(28)

兄が持つ日本記録の更新とパリ五輪出場を目指す右代さん

五輪代表の兄・啓祐氏は幼い頃から憧れの存在

 ロンドン五輪、リオ五輪の陸上十種競技日本代表の兄・啓祐氏(36)は昔から憧れの存在だった。「小学生のときに兄が八種競技でインターハイ2位になって北海道新聞に大きく取り上げられたのがすごく格好いいなって純粋に思って。僕も兄みたいになりたいと思った」と、中学では陸上部に入部。当初から将来的に兄と同じ競技に挑戦することを想定して、入部後は特定の競技に専念することなく、走り高跳びや砲丸投げ、ハードル、走り幅跳びなど十種競技にある競技に取り組む。2年秋から満を持して四種競技に挑戦。3年時の全道大会では見事に優勝を果たした。

 ところが、道内の高校に進学して八種競技に挑戦するも2年続けて体調不良でインターハイ予選を欠場。2年時の10月にはレベルアップを図るべく陸上の名門・東京高に転校した。3年時についにインターハイ本選出場の切符をつかみ取るが、またしても本番1週間前に急性虫垂炎になってしまう。医者からは出場をやめるように言われたが、どうしても最後のインターハイに出場したいという思いから、体にベルトを巻き付けて強行出場するなど、波瀾(はらん)万丈な高校時代を過ごした。

 その後、国士舘大3年時に十種競技で関東学生選手権優勝。日本学生選手権3位の実績を納める。同大大学院卒業後は兄弟での東京五輪出場を目指すが、同大会から出場枠が36人から24人に縮小したことも影響し、ともに出場資格を得ることができなかった。

コロナ禍で支援打ち切り…クラウドファンディングで活動費募る

 競技人生の集大成として自身が30歳で迎える2024年のパリ五輪出場に目標を切り替えるが、コロナ禍の影響でサポート企業からの支援は年内限りで打ち切られることが決定してしまう。日本国内の大会だけでは五輪の出場権を得るために必要な得点を稼ぐことができないため、海外の大会を転戦する必要があるが、活動費の捻出ができない状況に陥った。一時は引退を考えるほど追い詰められたが、それでも夢は諦め切れなかった。活動費をクラウドファンディングサイト「READYFOR」で募り、再び走り始めた。

 兄の背中を追い続け、その兄が持つ日本記録の更新、そしてパリ五輪を目指す道産子の挑戦は、まだまだ終わらない。


◆陸上十種競技 100メートル、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400メートル、110メートル障害、円盤投げ、棒高跳、やり投げ、1500メートルの合計10種目を2日間に渡って行い、総合得点を競う競技。優勝者は「キング・オブ・アスリート」と称される。日本記録は2014年に右代啓祐が記録した8308点。


■プロフィール 右代 啓欣(うしろ・ひろよし) 1994年10月25日、江別市生まれ。大麻東中時代に陸上を始める。中学で四種、高校で八種競技に挑戦。その傍ら漫画家を志したこともあり、実際に作品を描いて編集部へ投稿したこともある。札日大高を経て東京高でインターハイ出場。国士舘大3年時に関東学生選手権十種競技で優勝、日本学生選手権も3位。現在は陸上のほか、モデルとしても活動中。趣味は美術館巡りとサウナ。187センチ、83キロ。家族は両親と兄、姉。兄・啓祐は2012年ロンドン五輪、16年リオ五輪の陸上十種競技日本代表。

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