知内高・坂本がヤクルトと仮契約 背番号は「MAJOR」の主人公・茂野吾郎と同じ「56」
契約金3000万円、年俸500万円
ドラフト会議でヤクルトから4位指名された奥尻島出身の最速147キロ左腕・坂本拓己投手(知内高3年)が11月30日、知内町内で仮契約を行った。背番号は「56」。契約金は3000万円、年俸は500万円(推定)。12月6日に東京の球団事務所で本契約を交わし、入団発表に臨む。
仮契約を終えた坂本は「ドラフトが終わって1カ月ちょっと。実感が湧かなかったけど、日に日に実感が湧いてきた。長く1軍で活躍して、小さな野球少年に夢とか希望を与えられれば」と、将来の夢を思い描く。
奥尻島からは、奥尻中の大先輩でプロ通算165勝を挙げた佐藤義則さん(68)以来2人目の快挙だ。ドラフト指名後、11月上旬に初めて島へ帰省した。「小中の先生とか、たくさんの方々に声をかけていただいた。自分にとっての原点。自然が豊かで、のびのびと野球ができたことが大きい。そこで培った力を東京でも発揮したい。海産物が有名で、夏はウニがおいしい」と自ら〝観光大使〟となって島の魅力をアピールするつもりだ。
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
橿渕スカウト期待「個人的なイメージは石井一久投手」
今季、ヤクルトが戦った日本シリーズもチェックし、「チーム力が高く、個人個人の能力もレベルが高い」と、改めて自らが飛び込む国内最高峰の舞台を確認した。来年1月の新人合同自主トレに向けて、現在もトレーニングは継続中。体重は夏よりも5キロ増の85キロとなった。スピードガンで計測はしていないが「どんどん球威が上がっているのを感じている。直球をどんどん磨いて、プロで通用する投手になりたい」。ヤクルトの橿渕聡スカウト(48)は「将来的には先発ローテーションを。直球は速さも質もいい。それを伸ばしてほしい。個人的なイメージとしては石井一久投手。これから自分の投手像をつくっていってもらえれば」と、メジャーリーグも経験した石井一久(現楽天GM兼監督)の名前を引き合いに出して期待を込めた。
目指すは100マイルの速球「うまくいけば出せる」
さらに橿渕スカウトは坂本の背番号に「若い子がよく読んでいる『MAJOR』の主人公が付けていた」と、「56」を用意。漫画の主人公・茂野吾郎は、プロ野球選手の子供として育ち、けがの影響で右投げから左投げに転向。100マイル(160キロ)のジャイロボールを操り、メジャーリーグで活躍する。坂本自身も奥尻島時代にテレビのアニメに夢中になった。「56」を提示された時は、「僕も『MAJOR』を思い浮かべた。茂野吾郎のようなストレートを投げられるようになりたい。だんだん調子を上げて、うまくいけば出せる」と胸を踊らせた。
また、現実世界での憧れは、ヤクルトで生え抜きの石川雅規投手(42)。今季、デビューから21年連続勝利を記録した左腕で、「気持ちが強い。気になった事はどんどん聞いていきたい」と早くも弟子入り志願だ。
「前向きに検討します」同郷のスター・北島三郎さんを登場曲に
1軍登板が実現したあかつきには、知内町が生んだスーパースター・北島三郎さん(86)の名曲を登場曲に採用するビッグプランも飛び出した。同校野球部では、「まつり」がチャンステーマとして定着しており、「前向きに検討します」と、まんざらでもない様子だ。
仮契約には坂本の両親も出席。父・治広さん(54)は奥尻島で漁協に勤務。1993年の北海道南西沖地震では、自宅が全焼する被害を受けたが、その後に結婚し、立派に3人の子供を育て上げた。治広さんは末っ子である息子・拓己のプロ入りを心から喜び、「1軍で投げる時は駆けつけたい」と表情をほころばせた。坂本本人も「まずは自分が1軍で活躍することが恩返しになる」。東京にはまだ行ったことがなく、「スカイツリーへ行ってみたい」と笑みを浮かべる。離島のエースが、プロでもエースになることを目指し、まもなく上京する。
■プロフィール
坂本 拓己(さかもと・たくみ) 2004年7月6日、奥尻町生まれ。奥尻青苗小1年時に青苗スカイバードで野球を始める。奥尻中3年時は上ノ国中との連合チームでプレー。知内高では1年秋にベンチ入り。今夏は準決勝まで3試合連続完投。決勝でも先発したが、7回5失点で途中降板した。左投げ左打ち。180センチ、82キロ。家族は両親と兄、姉。