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「Ｒ－１グランプリ」出場も１回戦敗退「泣きたくなりました」

　不屈の精神力で自転車による米国縦横断を成し遂げた永関博紀さん（３２）はロードバイクだけではなく、これまでにも多くのことに挑戦してきた。お笑い芸人、政治家、街づくり…と、まさに〝激レア〟な人生を歩んでいる。

　日本縦断や米国縦横断を達成したロードバイクは、人生を彩るための一つのツールに過ぎない。命の危機も感じたチャレンジにもかかわらず「ほぼ暇つぶしです」と笑い飛ばした。小樽商科大を卒業後、大手ＩＴ企業に就職。２年半で退社した後は挑戦の連続だった。

　２０１６年にはお笑い芸人として「Ｒ―１グランプリ」に出場。しかし、結果はダダスベリでの１回戦敗退。「人を笑わせるって、一番大変。泣きたくなりましたね。あの帰りの幕張からの景色は本当に忘れられない」と、壁は予想以上に高かった。

何の実績も無い男が音楽フェス「すながわ公園祭」成功

　その後、地元・砂川市で生活していた永関さんは１９年、自転車と並行して音楽フェス開催を思い立った。一番最初にぶち当たった困難は出演者のキャスティングだ。ここまで何の実績もない男は、片っ端からオファーを依頼した。

　「ほぼ断られるか、返事が帰ってこないか。きついなと思いながら。でも、連絡が来て（フェスに）出てくれると、これもキャスティングの楽しいところ」。そんな孤軍奮闘も実り、大塚愛、谷中敦（東京スカパラダイスオーケストラ）、松本梨香、やついいちろう（エレキコミック）といった有名ミュージシャンが出演し「すながわ公園祭」を成功させた。

今年６月に新十津川町で「SORAON」開催　３０００人熱狂

　コロナ禍だったこともあり、２０、２１年はフェスを企画しなかったが、今年は６月に新十津川町で「ＳＯＲＡＯＮ」を開催。中島美嘉、スガシカオ、瑛斗、ＭＯＮＫＥＹ　ＭＡＪＩＫ、高橋洋子、Ｓａｌｙｕ、Ｎｏｖｅｌｂｒｉｇｈｔなど、出演アーティストの幅は広がった。「チケットを売らなきゃいけないっていうプレッシャーは尋常じゃない。売れなかったら、３０００万借金…みたいな感じなんで、ここのプレッシャーはえぐい」と振り返ったが、当日は３０００人が参加し、大盛況で幕を閉じた。

　「当日っすよね。全てそこで報われちゃう。イベントの最中はやっぱり楽しい。自分の思いだけで始まって、自分があの時に考えなかったら、この熱狂は生まれてないって思うと、なんか人の思い一つってすごい」。

政界進出ー　砂川市議を辞めて歌志内市長選出馬も完敗

　それだけにとどまらない。永関さんは政治家への転身も果たしていた。１９年に砂川市議会議員の選挙に出馬し、見事当選した。しかし「市議会議員とか、道議会議員とか、国会議員とかは何百人分の１人。なかなか自分のやりたいことを形にするのは難しい」と感じたという。すると、「長になることで人も動かせるし、方向性もバッとこう打ち出せる。人事権もあるし、予算権もある」と市議会議員を１年半で辞め、隣の歌志内市長選挙に挑戦した。

　結果はダブルスコアを付けられての完敗だったが、後悔はない。むしろ政治家挑戦への気持ちはさらに強くなっている。「政治家になりたいっすよ、やっぱり。政治家としての街づくり、人づくりが今一番、興味があります」と目を輝かせる。

やりたいことはまだ「１００のうちの１.３」挑戦は終わらない

　今後の活動に向けては「フェス、政治、自転車。今、興味あるのはこの３つ」とキッパリ。「本当にまだまだすぎて（ベースは）ゼロ。（自転車の）アメリカ（縦横断）をやりきって、１００のうちの１.３ぐらいまで来たかな」と永関さん。

　身一つで多くのことに当たってきた。無残に砕け散ったこともあったが、何にも変えがたい景色を多く見てきた。コロナ禍で世界中に閉塞感があるからこそ、この思いを次の若い世代へと伝えたい。

　「今のモチベーションはそこがでかい。『この世界の広さとか、人生にルールなんて何もない。やりたいことやれよ』みたいなことを伝えたくて、うずうずしている」。そう熱っぽく訴えた永関さんの挑戦に終わりはない。

■プロフィール　永関博紀（ながせき・ひろき）　１９９０年６月２８日、砂川市生まれ。滝川高から小樽商科大に進学。卒業後は大手ＩＴ企業に就職し、インターネット番組製作に携わった。２年半で退職し、ロードバイクの挑戦を始める。２０１８年に日本縦断を達成し、今年悲願の米国縦横断を成し遂げた。同年に株式会社挑戦舎を起業し、代表取締役社長に就任。１９年には砂川市市議会議員に当選。翌２０年に歌志内市長選挙に出馬するも、敗れた。１７５センチ、６８キロ。家族は両親、兄２人、姉、妹。