《河合CRC竜の眼》4年後のW杯で輝け
新たな時代の入り口に立った日本代表 次回大会に期待する札幌の2選手
W杯で2度の奇跡を起こした日本代表が、新たな時代の到来を予感させてくれた。ベスト16の壁は破れなかったが、120分を戦って敗れたクロアチア戦の悔しさが4年後の成長につながり、次回大会では必ずや新たな景色を見させてくれることだろう。
今回は、今季の戦いを終えた札幌の選手たちの中から、成長著しく、4年後のW杯に絡めるような、そんなスケール感を持った2人の選手を深掘りしたい。
今季リーグ戦デビューを果たしたDF中村桐耶
まずは今年5月7日の京都戦(1-0、札幌D)でリーグ戦初出場を果たした高卒4年目のDF中村桐耶(22)だ。デビュー戦で自信をつかんだのか、プレーが明らかに良くなった。途中から出ることは多かったが、12試合に出場し、だいぶ試合に絡めるようになった。今季、非常に伸びた選手の一人と言っていいだろう。
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持ち味は推進力のあるドリブル
以前と比べて判断が良くなり、周りを見る余裕が出てきた。持ち味である推進力のあるドリブルや、ゴール前、バイタルエリアへのパスの配球も良いシーンが目立った。
印象的だったのはホーム厚別で10月1日に行われた川崎戦(4-3)。後半ロスタイム12分に決勝点が生まれたが、その時のフリーランは相手の脅威となっていた。バイタルでボールを持ったFW金健熙(27)を左から追い越す動きだ。迫力があり、あのスピードと強度で、そのスペースに入って来られると、相手DFとしては非常に判断に迷う。結果的に反対にいたFW小柏にパスが渡ってゴールとなったが、桐耶の相手DFを釣る動きが無かったら、どうなっていたかは分からない。
そういう動きというのはチームを助けるし、桐耶のストロングポイントでもあると思うので、これからもどんどん出していってもらいたい。勝負の5年目となる来季、しっかりとレギュラーをつかみ取れれば、日本代表選出というのも見えてくるだろう。
元FWの左利き 代表でも重宝される貴重な存在となり得る
186センチというサイズ感で、ボールを持った時に推進力があり、左利き。もともとFWをやっていたこともあって、他のDF選手とは攻撃面で違いを見せられる。代表でも重宝される貴重な存在となり得るのではないか。DF伊藤洋輝(23、シュトゥットガルト)という選手もいるが、左サイドのDFは比較的ライバルが少ないポジションであり、そいう選手を追い抜く可能性は十分にある。
そのためにも来季はレギュラーを確実なものとして、多くの出場機会を得てもらいたい。試合の中で、伸びしろの部分を磨いていけば、成長度は増す。全てのプレーの質にこだわり、一つ一つの精度を上げていけば、必ず道は開けてくる。
今季はけがで悔しい思いをしたFW小柏剛
来季の飛躍と4年後の成長が楽しみなもう一人の選手は、昨年12月に日本代表に選ばれながら、負傷で辞退し、その後もけがの再発で悔しいシーズンを送ったFW小柏剛(24)だ。今季はだいぶ自分の思い描いていたイメージとは違うものになったと思うが、その逆境が本人の成長につながっていると信じたい。
苦しんだ分だけ気持ちは強くなる
私も現役時代の経験から、その苦しみや、いら立ちが分かっているつもりだが、周りが思っている以上に本人は苦しんでいたのだと思う。「またかよ。何で俺だけ」と、メンタルが落ちたこともあっただろう。いろいろな人の支えもあっただろうし、それを乗り越えた時には、苦しんだ分だけ、その気持ちは強くなっていたはずだ。
2度目の長期離脱から戻って来た8月7日のアウェー湘南戦(5-1)では、その思いが爆発した。相手DFの裏に抜けるスピードは抜群で、前半9分にいきなり右サイドを切り裂いて先制点をアシスト。その後も何度も相手DF裏へトライし、絶好機を演出していた。
川崎戦の決勝ゴールでFWとしての価値高めた
今季は13試合出場で2得点と、ゴールこそ少なかったが、裏に抜ける動きでDFとMFを間延びさせ、チャンスを多くつくることで存在感を示していた。特にホーム厚別で10月1日に行われた川崎戦(4-3)では、後半ロスタイム12分に仕掛けて決勝点を挙げ、あらためてFWとしての価値を高めた。来季もコンスタントに試合に出られるようであれば、また代表からも声がかかってくることだろう。まずは1年を通して試合に出られるような体づくりに励んでほしい。
代表FW前田大然超えを目指せ
代表ではサイズ的にFW前田大然(25、セルティックFC)と似ているが、あのスピードスターぶりや献身性も、将来的に剛なら超えられると思うし、それに向かって突き進んでもらいたい。
W杯は日本国民全体がこれだけ熱く応援してくれる素晴らしい大会なので、そのピッチに札幌の選手がいてくれたなら、なおさらうれしいし、そこはクラブとしても目指すところ。北海道の皆さんもめちゃくちゃ応援してくれると思うし、4年後W杯のピッチにコンサドーレの選手が立てるように、クラブとしても取り組んでいきたい。
たくましくなった人間力が2人の成長を加速させた
どんな選手でも、どんな世界でも、人間性というのは大事だ。成長するかどうかは人間力に全てかかっていると言っても過言ではない。剛はけがをしたことでたくましくなり、桐耶もHondaFCへの期限付き移籍を経て、人として一回り大きくなった。
人間力が高い、素晴らしい選手ほど成長するというのは、この世界に生きて来て感じるところだし、最後に残るのはそういう人なんだと、うちの伸二(小野)を見ていてそう思う。チームには良い見本がいる。これからも2人には貪欲に学んでほしい。可能性は無限にある。
(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)