ファイターズ
2022/12/19 22:10

連載「FtoF」①ゴルファーに転身した今井順之助さん

日本ハム時代の今井さん。今はプロゴルファーを目指して奮闘中

目指すはマスターズ出場 地元の岐阜で研修生として日々鍛錬

 日本ハム(〝F〟IGHTERS)に在籍した元プロ野球選手に、未来(〝F〟UTURE)への展望を聞く連載「FtoF」。決意を胸に第2の人生を歩む若者にスポットを当てる。第1回は、2021年に退団した今井順之助さん(24)。引退後に選んだのは、ゴルフの道だった。現在は地元・岐阜の愛岐カントリークラブに研修生として所属し、日々練習を重ねている。夢は世界最高峰のメジャー大会、マスターズ出場。異例の転身を決断した理由に迫った。

 野球を諦める決断は、簡単ではなかった。2016年のドラフトで9位指名を受け日本ハムに入団。5年間の在籍期間で1軍出場は4試合だったが、シュアな打撃には定評があった。それでも、21年10月に戦力外通告を受けた。

21年戦力外通告に「まさか自分が…」

 「まさか自分がってよく言うじゃないですか。本当にそういう感じで。育成(契約)の打診もなかったので、自分から無給でいいから育成でやらせてくれって打診しました。NPBのユニホームでもう1年勝負したかった」

 球団に何度も頭を下げたが、願いはかなわなかった。トライアウトも受けたが、NPBからのオファーはゼロ。わずかな可能性に懸けて単身で海を渡り、今年3月にメキシコのデュランゴ・ジェネラルズにテスト生として入団した。しかし、異国の地で一人、野球に向き合う中で、気持ちが変化していることに気がついた。

野球をリスペクトしているからこその決断

 「育成でもいいからっていうプライドゼロの話を自分からしにいった時にノーと言われて、意地になって野球を続けていた。これ以上続けていたら今後、野球を伝える立場になった時に、嫌なことを言ってしまいそうだった。自分にとって、これ以上はプラスにならない。野球をリスペクトしているからこそ、ただ人を見返すための意地を張ってやるくらいなら、やらない方がいいと思った」

 チームは正式契約の準備を進めていたが、断って現役引退を決断。日本に戻り、友達と遊びでゴルフをする生活を送っていた中で、4月下旬に行われた日本男子のプロツアー「中日クラウンズ」を生観戦し、本気でプロを目指す決意を固めた。

 「プロのプレーを見て、かっこいいな、自分もああなりたいなって思っちゃった。本当は、アイスクリーム屋とか焼き肉屋とかも考えていたんですけど(笑)。お金を稼ぐどうこうの前に、ああいうプレーをしたいなって思って、家族に相談した」

ゴルフ漬けの日々 背を押したのはプロゴルファーの母 

 プロゴルファーの母・成美さんから、研修生になることを勧められ、つてを頼って愛岐カントリークラブに所属することが決まった。今はキャディなどの仕事をこなしながら、腕を磨く生活を送っている。

 「6時半から(午後)2時半くらいまで、バッグを運んだり荷物を載せたりしています。空いた時間で練習をして、仕事後はコースに出たり、アプローチの練習をやったり。お金ももらいながら、社員のような感じで。月金が休みですが、週7で朝から日が暮れるまでゴルフ場にいます。普通は24歳からゴルフをやり始めて、入れてくれるところはまずない。本当にありがたかった」

ゴルフでも長距離砲 「体の動かし方は野球で勉強」

 現在の最高スコアは75。野球とは逆の右打ちで、飛距離には自信がある〝長距離ヒッター〟だ。課題はまだまだ山積みだというが、表情は明るい。今は来年のプロテスト受験を考えず、一歩ずつ成長を続けていくつもりだ。

 「ユーチューブで毎日、風呂に入りながらマキロイやウッズの動画を見て勉強しています。体の動かし方は野球で勉強していたので、それも役に立っています。最終的な目標は、マスターズに出たい。通過点としてプロテストがある。プロテストを目標にしていたら、それ以上は絶対にない。準備をしっかりやって、一気にどーんといきたい」

ソフトバンク移籍の近藤からもエール

 元チームメートで、ソフトバンク移籍が決まった近藤からは「プロになったら、スポンサーになってやる」と激励されたという。いつでも自分が「好きだ」と思ったものに全力で打ち込んできた今井さん。バットをクラブに持ち替えたが、楽しそうに夢を語る姿は現役時代と全く変わっていなかった。

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