冬季スポーツ
2022/12/24 17:00

ジャンプ週間に帯同する和田トレーナー 選手時代は小林陵侑、高梨沙羅と同期の黄金世代

壁にジャンプ週間優勝時の小林陵侑のゼッケンなどが飾られるアスリート治療院で選手らに施術を行う和田トレーナー

選手としての夢は叶わなず引退も 現在は同じ日の丸を背負って黄金世代をサポート

 グランドスラムを達成すれば五輪の金メダルやW杯総合優勝にも匹敵するほど価値が高いと言われるスキージャンプ週間(28日開幕、ドイツほか)に、日本代表トレーナーとして帯同する元選手の和田全功さん(26)が24日、日本を出発した。現役時代から〝黄金世代〟の一員。2022年北京五輪で金・銀メダルを獲得した小林陵侑(26、土屋ホーム)や、今季W杯初の表彰台に上がった中村直幹(26、フライングラボラトリー)、女子ではW杯最多63勝の高梨沙羅(26、クラレ)らと同期だ。選手としての五輪出場はかなわなかったが、今は同じ日の丸を背負って世界と戦う選手を裏方として支えている。

「一発目がジャンプ週間っていうのが、すごい重みを感じる」

 新たな夢の実現へ、その入り口に立った。W杯をかねて行われるジャンプ週間だが、現地ファンの盛り上がりは日本とは段違い。コロナ前は例年約10万人の大観衆が詰めかけ、酒を飲みながら観戦を楽しむなど、ファンが最も熱狂するジャンプの〝お祭り〟だ。「冬の帯同が初めてで、一発目がジャンプ週間っていうのが、すごい重みを感じますけど、僕も立ってみたかった舞台。選手のすぐ横で、W杯の舞台で、サポートをするのが僕のトレーナーとしての夢だった」と声を弾ませた。

今年3月に国家資格を取得

 トレーナーを志し、北海道メディカルスクールに通っていた20年の春、進路に悩んでいた和田に同じ元選手で日本代表にも帯同したアスリート治療院(札幌市中央区)の竹花智院長(56)から「一緒にオリンピックに行くぞ」と声を掛けられ、「その言葉が決め手だった」と同院への就職を決意した。その後はパニック障害を発症するなど逆境も重なったが、今年3月に国家資格を取得した。

今では小林らが「ご指名」 プライベートでも親交が深い 

 同院にはトレーニング設備も併設され、以前から小林や中村も通っていたが、今では2人とも和田トレーナーを「ご指名」で訪れるという。2人が日本滞在時は「一緒にご飯に行って、お酒を飲んでます」とプライベートでも親交は深い。1年ほど前、中村が拠点をドイツに移すかどうかで悩んでいると聞くと「いいんじゃない」と背中を押した。今では「一緒にやってきた2人の活躍を見るとうれしいです」と笑みを浮かべる。

サマーグランプリで流れつかむ

 7月には、W杯と同格のサマーグランプリに男子日本代表トレーナーとして初帯同。「移動とか、流れとか、試合運びとかも学べた」。男子W杯前半戦に帯同していた長谷部大貴トレーナー(38)は勤務先の上司。選手一人一人の細かな体の状態が記された電子カルテも共有した。

「選手のジャンプが良くなった時に本当に良かった」

 「体の表面的な部分は、はりやお灸で治療するんですけど、ジャンプは感覚のスポーツ。僕が教えられる範囲の感覚っていうのを伝えた時に、選手自身が『そういうことか、これはなんか発見だな』とか言われた時や、それが選手のジャンプに落とし込まれて良くなった時には本当に良かった、伝えられて良かった」と、トレーナー冥利(みょうり)に尽きるという和田さん。いよいよ冬の大一番が始まる。チームジャパンの一員として、万全の状態で選手をスタート台に送り出すつもりだ。


■プロフィール 和田全功(わだ・ともかつ) 1996年6月25日、余市町生まれ。兄・圭充さんの影響で、余市黒川小1年から余市ジャンプ少年団で競技を始める。余市紅志高3年時にインターハイ2位。家族は両親と姉、兄。

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