旭川龍谷の3年生3人娘 次は大学で切磋琢磨 全国高校駅伝女子
■全国高校駅伝女子(25日、たけびしスタジアム京都発着、21.0975キロ)
北海道高校記録更新ならず 1時間12分8秒で24位
11年連続11回目の出場となった旭川龍谷は、北海道高校記録となる1時間9分台を目指して奮闘したが、1時間12分8秒で24位に終わり、目標を達成することはできなかった。コロナ禍の逆境にも負けずにチームを支えてきた3人の3年生の思いを胸に、チームは来年こそ記録を更新すべく、新たな戦いのスタートをきる。
スタートの号砲が鳴り響いてから1時間12分8秒。旭川龍谷のアンカー中野芽衣(2年)が、母校のタスキを再びスタジアムへ運んできた。大会前に掲げていた目標にはタイム、順位ともに届かなかったが、5人それぞれが持てる力を振り絞って都大路を走り抜いた。
2区・石川が6人抜き
1区では山本望結(2年)が区間31位と苦しみ、厳しい立ち上がりとなってしまう。その山本からタスキを受け取ったのは、今年の全道高校1500㍍、3000㍍で2冠を達成した石川苺(3年)。3年連続の出走となった2区で、6人抜きの力走を見せる。「順位は上げたけれど、(昨年よりも)タイムが良くなかったので悔しいです。厳しかったけれど、1秒でも縮めようと思って最後まで走りました」と都大路でのラストランを振り返った。
3区・益塚も順位3つ上げる
石川が作った流れに3区の益塚稀(2年)も乗って、区間個人8位の快走を見せる。順位を3つ上げて22位で中継所に飛び込むと、待っていたのは最初で最後の都大路となる工藤凜果(3年)。一昨年9月、朝練習終了後に寮へ戻る途中に交通事故に遭い、全身に打撲を負ってしまい、完全復活までに半年もの時間を要した。苦難を乗り越えて迎えた初の晴れ舞台。「事故で走れなくなってしまったときは、本当にこの先走れるのだろうかという思いはありました。3年目にしてやっと(メンバーに)選ばれて、みんなに助けられた分、絶対に貯金をつくりたいと思ったけれど、うまく走ることができなくて、本当に悔しいです」。順位を2つ下げてしまったものの、しっかりとタスキをアンカーの中野へ送り届けた。
阿部文仁監督(46)は「今回は先頭の10チームぐらいと後ろが離れてしまった。(追いかける際に)とん、とん、とんと(前の選手が)いてくれたら、全然変わったと思う」と、レースの流れが向かなかったことを悔やんだ。
体調整わずバックアップを務めた泉主将
レースを走った石川、工藤だけではなく、この日のチームを舞台裏で支えたもうひとりの3年生がいる。陸上部主将の泉桃果だ。旭川神居東中時代に2年連続で全国中学駅伝出場経験があるが、昨年までは駅伝メンバーに選ばれていなかった。最初で最後の都大路出場を目指していた泉だったが、アクシデントが襲った。10月に部内で新型コロナがまん延し、泉も罹患(りかん)。後遺症に苦しみ、11月に入ってようやく状態は上向くが、選考時期に間に合わず、無念のメンバー外となってしまった。それでもチームのため、スタッフとしての仕事をしっかりとこなした。この日は工藤の付き添いとして朝から同行し、同級生の初出走を陰で支えた。
家族以上の時間を一緒に過ごしてきた
3人の3年生が旭川龍谷に入学したのは、ちょうど新型コロナの流行が始まった時期。外出もままならない中、寮生活を始めた3人は、日々一緒にいて絆を深め合った。石川は「つらいときも、楽しいときも、家族以上の時間を一緒に過ごしてきた。3人で過ごした思い出は一生忘れない」と、親友たちとの3年間を振り返った。
阿部監督は3人の3年生を「競技に対して真摯(しんし)に取り組む姿勢は、後輩たちのお手本になっている。その姿勢も後輩にも引き継いでいってほしい」と称賛する。
進路は別々「みんなでインカレで会えたら」
3人はそれぞれ関東の大学に進学し、陸上を続ける。玉川大へ進む泉はこの日のチームを見て「結果には結びつかなかったけど、すごくいい刺激になりました。私ももっと大きな舞台で戦える選手になりたいです」と、新たなモチベーションとする。東海大に進学する工藤も「お互い切磋琢磨(せっさたくま)して頑張りたい」と語り、城西大に進む石川は「みんなでインカレで会えたらうれしい」と未来を思い描く。
今年の都大路の舞台では、目標を達成することはできなかった。だが来年のチームには、それぞれ2年連続で全国を経験した山本、益塚、中野の3人を軸とした強力メンバーが残る。「今までは24位だと『まあまあだね』というような世界だったが、それがすごく悔しいと思えるようになっている。今の2年生は去年は活躍したけど、今回ちょっと失敗して借りができたので、また来年に向けて頑張るという気持ちでいますし、選手たちは力があるので、私自身もそれをちゃんと出してあげられるように1年間かけて頑張りたいです」と阿部監督は来季を見据えた。
3人の3年生がそれぞれの立場で支えてきた今年のチームは、この日フィニッシュテープを切った。その3人の意思を実力者ぞろいの2年生たちが受け継ぎ、来年こそ都大路で北海道記録を打ち立てるため、旭川龍谷は新たな戦いをスタートさせる。