《ハム番24時》拡大版⑥
BIGBOSSに振り回され、引き込まれた22年
刺激的な1年だった。新庄剛志監督(50)を追いかけた。現役時代を取材したことはなかったが、先輩記者に聞いていた通り、行動や言動はいつも予測不能。発想が独創的で、脱線しまくりのトークに引き込まれた。無意識的に備わっていた常識や慣例は、従来の「監督像」と一緒に打ち砕かれた。
2021年秋。新庄監督の就任は、荒療治のようにも感じた。フロントの方針を深く理解し、あうんの呼吸で指揮を執っていた栗山英樹監督(61)が退いた。球団がバトンを手渡したのは、引退後にインドネシア・バリ島へ移住し、約15年間、日本球界から離れていた異端のスター。路線継承ではなく、改革にかじを切った。
スタメン予想は1度も当たらず サプライズは日常茶飯事
日本ハム本社の意向も働いていたと聞く。低迷期に突入し、当時主力だった中田翔内野手(33、巨人)がチーム内で暴力行為を働いたことも明るみに出ていた。閉塞(へいそく)感のような息苦しさが、見え隠れしていた。衝撃的な監督交代を受け、チームスタッフの一人が「誰も制御できない人。パンドラの箱を開けてしまったのかもね」と表現した。絶大な人気を誇る英雄だが、コーチ経験はなく、手腕は未知数。多少の反発は覚悟の上で、踏み切ったのだろう。
新庄監督は独自路線を行き、平然としがらみを断ち切った。勝つことを目指さない前代未聞のシーズン。栗山監督時代と比較して、権限と責任が集中している印象を受けた。コーチ陣も〝ボス〟の思考に沿って動く。作戦や継投を含めた選手交代など、新庄イズムが色濃く反映されていた。
結局、スタメン予想が当たることは一度もなかった。サプライズの連続。成功時の報酬と失敗時のリスクをてんびんにかけて、明らかに分が悪いと想像できる戦術も平気で繰り出した。データや確率では説明できないような出来事が多かった。
期待せずにはいられない23年シーズン 痛快な結末を望む
1つ、仮説を立てる。非合理的に見えた作戦も、不思議な起用法も全て計算されていたとしたら―。23年、膨らませたクレージーな幻想を逆手に取り、ライバルたちを出し抜くことができたら、痛快だ。