コンサドーレ
2023/01/05 11:30

J1札幌のバンディエラ 宮澤裕樹主将インタビュー《共に歩む》前編

今季加入16年目の宮澤主将。札幌のバンディエラが22年シーズンを振り返る

■新春特別インタビュー

 北海道コンサドーレ札幌のMF宮澤裕樹(33)が2008年に札幌へ加入してから今年で16年目となる。チーム在籍年数、札幌でのJリーグ通算452試合出場は歴代最多。3年目から10番を背負い、今では札幌のバンディエラ(象徴的な選手)と呼ばれる存在となった。08年、12年と、2度のJ2降格をチームで唯一知る宮澤の目に昨季の残留争いはどう映ったのか。16年から務める主将として近年の札幌に思うことや、23年シーズンの自身の目標についても語った。

コンディション不良で今季25試合止まり「難しいシーズン」

 22年シーズンの札幌は、タイトル奪取やACL出場権獲得を目標に掲げたものの、「上を目指していくという目標の中で、自分たちが思い描くような順位で戦えなかった」と宮澤。チームは夏場に低迷し、クラブはJ1残留に目標を切り替えた。

 ケガ人が多く、復帰してもまた違う選手がケガをしてしまうという悪循環にも陥っていた。「シーズンを通して安定したパフォーマンスを出すことができなかった。もちろん良いゲームもたくさんあったし、一つ一つの試合で見ると優勝争いをしているチーム相手にも良いゲームができていたけど、1年間通して力を出し切るのを継続していくこと、戦力を維持したまま戦い続けるということに難しさを感じた」。横浜M、川崎といった上位5クラブ相手にはホーム&アウェーの10戦中3勝5分2敗と勝ち越しながら、メンバーが揃わない中で大量失点での敗戦が複数あるなど、シーズンを通して安定して戦う難しさを痛感していた。

 自身も「コンディションが安定しなかった。抱えているケガの状況がいつもより悪くなってしまって。コンディションが上がらない部分で、途中からベンチスタートの機会も増えたし、ケガで試合に出られない時期もあって、難しいシーズンだった」。リーグ戦25試合出場のうちフル出場は11試合。25試合という出場数もルーキー時代を含め、過去3番目に少ない数字だ。

ケガから復帰「何とか期待に応えたい」自ら決めた6年連続J1残留弾

 今年で34歳。「(昔に比べて)休息を取るようになった。体のケアも増えたし、今までは全くやってこなかった体の補強もやるようになった」。年々変わっていく体の状態や、変わっていくアスリートとしての感覚。自身と向き合い、コンディションには細心の注意を払ってきた。

 それでも昨年8月に右アキレス腱を痛めて離脱。練習に復帰してもすぐには試合に出られず、途中出場で戦列復帰したのは10月12日の浦和戦だ。チームはその前の福岡戦で勝てば残留を決められていたが達成できず。残留確定条件は浦和戦も同じだった。宮澤は誰よりもベンチで声を出していた。後半の残り13分からの出場だったが、1―1で引き分け、敵地での勝ち点上積みに貢献した。

 同29日、その次のアウェー広島戦で8試合ぶりに先発復帰した。1-1の後半10分、宮澤がサイドチェンジの折り返しを胸トラップして冷静にゴールを沈め、札幌が勝ち越しに成功。リードを守り切った札幌は6年連続のJ1残留をここで決めた。苦難の時代を知る主将が残留へ導く渾身の一撃。試合後、「貢献できて良かった。何とか期待に応えたいと思っていた中で、自分がゴールという形で貢献できたこと、残留できたことがうれしい」と殊勲のゴールを喜んだ。そして、「J1はやっぱり難しいなって。ちょっと噛み合わなかったら、こういう結果になる。やっぱ嫌ですね。下のドキドキ感を感じるのは。昔を思い出すので」と下位に低迷したことに人一倍、責任を感じていた。それはJ2降格の辛さを、誰よりも身に染みて感じてきたからだ。

背中で引っ張るキャプテン「みんなで盛り上げて、チームとして戦っていく」

 プロ1年目の08年、J2降格が決まった厚別での柏戦は試合に絡めなかった。12年は主力として戦っていたが、9月の川崎戦で敗れ、7試合を残して自身2度目の降格を経験。サポーターからも罵倒され、ピッチで味わった無力感、その悔しさは二度と味わいたくなかった。

 昨季、成績が出ない中でもチームがバラバラにならず、残留に向けて一丸となって進むことができたのは、一体感が失われなかったからだ。負けが続いても、「雰囲気は良かった。一人一人が自己主張が強くて練習中もバチバチ言い合って、というチームではなくて、普段からみんな仲が良くて、みんなで盛り上げて、チームとして戦っていく、というチームなので。僕はできるだけその雰囲気を保とうとした」。その中心に、いつも宮澤がいた。

 決して大声を叫んで引っ張って行くタイプのキャプテンではない。難しいことは何も言わなくとも、チームの状況を的確に判断し、一つのプレーや、背中で引っ張る。そして自然とチームが一つになる。札幌にとって欠かすことができない唯一無二の存在、それが札幌のバンディエラと呼ばれる由縁だ。

《後編に続く》

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