稚内大谷高出身のヤクルトOB・宇佐美康広さん(47)「改めて戻ったら野球は素晴らしい」《人ほっとコーナー》
捕手として入団も3年目には内野コンバート「化け物の集まり」
ヤクルトの2軍本拠地のある埼玉・戸田市で「ロクハチ野球工房」という野球用品専門店を営んでいる宇佐美さん。2016年12月に開業し、現在は7年目に突入。「7年もお店をやっていると、最初にグラブを買いに来てくれた子が『高校生になりました』とか『大学生になりました』とか、お客さんの成長を見られるのがすごくうれしい」と微笑んだ。
1994年、捕手として稚内大谷高からヤクルトに入団した。2年目に内野手を守るようになると、3年目は完全にコンバート。しかし、プロの壁は厚かった。「化け物の集まりみたいな感じ。古田(敦也)さんが正捕手で、ライバルどころじゃない。同じテーブルになんか立てない。まず2軍の試合に出るのが精一杯。何とか出なきゃいけないっていう感じだった」と振り返った。
2000年に現役を引退すると、「野球に携わる仕事はやらないって決めていた。野球しかできなくなるのは嫌だなと思っていた」と競技からは離れ、建築会社の営業マンとして14年働いた。その後、長男が野球を始めたことをきっかけに、「野球って楽しい、もう一回、やってみようかな」との思いを抱いた。
店舗運営の傍ら、硬式野球クラブチームで野手コーチとして尽力
長男の通う少年野球チームの監督を務めたこともあり、「自分が今まで経験してきたことを還元して、子供たちが成長していくと、周りの人たちが喜んでくれる。これはもう一回、野球でやるべきだなって」。気付けば、再び野球の虜となっていた。
親交のあったグラブメーカー「ドナイヤ」の村田裕信社長に相談すると、「野球のグラブを販売したらいい」と背中を押されたという。成功するか半信半疑だったが、グラブを湯もみ型付けするサービスが関東では少なかったことから、開業に踏み切った。
店舗運営の傍らで、野球指導も行っている。15年に学生指導資格を回復。現在は硬式野球のクラブチーム「GXAスカイホークス」で野手総合コーチを務めている。「高校を中退しちゃった子、あとは大学、社会人でアルバイトしながら、そこで練習して、独立リーグを目指したりっていう子が集まってきている」と、平日の午前中はコーチ業に尽力する。
将来については、「平穏に暮らしたい(笑)」と冗談めかしながらも、「(野球から)離れたからこそ、改めて戻ったら野球は素晴らしいなって気付いた。自分の得意なカテゴリーで、一生懸命やる子たちのサポートをしていきたい」と〝恩返し〟を続けていく。
■プロフィール 宇佐美康広(うさみ・やすひろ) 1975年12月18日、歌登町(現枝幸町)生まれ。歌登中から稚内大谷高に進学。高校3年夏は「1番・捕手」でチームをけん引し、北北海道大会決勝に進出するも旭川大学高に1―2で惜敗した。93年のドラフトでヤクルトに6位指名されて入団。2000年に現役引退後は、メンタル心理カウンセラー、スポーツフードアドバイザー、キッズコーチなどの資格を取得した。15年には学生指導資格を回復。16年12月に「ロクハチ野球工房」をオープンした。170センチ、70キロ。右投げ両打ち。家族は妻と長男と長女。