高校野球
2023/01/27 19:30

稚内大谷 センバツ21世紀枠選ばれず 悲願の名寄支部初甲子園は夏へ

21世紀枠落選がわかり、他校の選抜理由を聞く稚内大谷野球部員(撮影・宮永春希)

20年前と同じ補欠校に

 日本高野連は27日、第95回記念選抜高校野球大会(3月16日開幕、阪神甲子園球場)出場校を発表した。昨秋の全道大会に出場し、20年ぶり2度目の21世紀枠候補に選出された稚内大谷は惜しくも落選した。

 20年前と同じ21世紀枠補欠校。あと一歩だった。体育館で中継を見守ったナイン。主将の高橋大空投手(2年)は落選の結果に「悔しい気持ちと、自分たちの力不足を痛感した。本番の夏に向けて戦わないといけないので、しっかり練習の量や質を上げていかないと」と前を向いた。

夏は3度北北海道大会準優勝

 北大会初出場の1980年から3度の決勝進出も全てサヨナラ負け。今回2度目の21世紀枠候補を含め「ある意味5度目の正直でもあった」と本間敬三監督(38)は声を絞り出した。前日、部員には「どっちの結果になっても、しっかり受け入れる気持ちは作っておこう」と話をしていたが、落選の一報に「先生が受け止められてないかもしれない」と、少し言葉を詰まらせるシーンもあった。

交通安全啓発たすきリレーや独居老人宅除雪ボランティア

 21世紀枠選考理由の一つである地域との関係は密接だ。82年から春の交通安全運動に合わせて、部員が稚内から浜頓別までをたすきで繋ぎながら啓発活動に協力。さらに86年からは毎年冬の期間、独居老人宅を除雪ボランティアで回っている。今年も21日に部員27人が稚内市内を巡った。

 さらに21世紀枠選出に備え、例年より早く1月5日から19日まで強化練習を敢行した。冬の平均気温は氷点下10~14度。道内にはもっと低い地域はあるが、三方を海に囲まれる稚内市は風速10メートル以上の日が年間90日間。グラウンドが高台にあるため練習中も強烈な寒風が吹き込み、体感温度はもっと低い。高橋大空主将は「毎日外で走ったり、短い100メートルのダッシュを何十本も毎日続けてやっていた。精神的にも肉体的にも本当に追い込めた約1カ月だった」と準備していた。

OB宇佐美さん「今度は実力で北北海道大会を勝ち上がろう」

 それでも吉報は訪れなかった。元ヤクルトで93年の北大会準優勝メンバーの宇佐美康広さん(47)は、昨年8月から定期的に埼玉県から稚内を訪れチームを指導している。この日も仕事を休み強行軍で選手と一緒に見守った。中継終了後、ナインに「選ばれなかったのは実力不足。本当にすごい悔しい、残念なんだけど、がぜんやる気が出てきましたね。今度は実力で北北海道大会を勝ち上がって、夏の甲子園に行けるように、みんなで力合わせて頑張りましょう」と励ました。

 今年4月に創立60周年の節目を迎える。本間監督は「節目に花を添えたい」と意気込む。「昨年の秋は、打線で活発に行ったけれども、勝ち上がっていくためにはバッテリー中心にしっかり守るところが大事」と堅守構築に時間を割く。

決戦の地はエスコンフィールド

 この夏、甲子園をかけた南北・北海道大会の準決勝と決勝は、日本ハムが北広島に開業するエスコンフィールド北海道で開催される。来年度以降の開催は未定で、最初で最後のチャンスかもしれない。高橋大空主将は「準決勝まで行ったら決勝と2回戦える。そこまで行って優勝して甲子園に行きたい」。冬の取り組みが無駄じゃなかったことを証明するために〝6度目の正直〟で、日本最北の地から甲子園出場を成し遂げる。

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