【卓球】張本美和との共闘を目指す留萌市出身の14歳・櫻井花 大阪国際招待で初陣初V狙う
木下アビエル神奈川で石川、平野、張本とチームメート 昨年12月にはTリーグデビュー
昨年12月にTリーグデビューした留萌市出身の櫻井花(14、木下卓球アカデミー)が、2月17日に開幕する大阪国際招待卓球選手権(エディオンアリーナ大阪など)で女子ダブルスとジュニア女子シングルスに初出場する。Tリーグ・木下アビエル神奈川のチームメートには石川佳純(29)や平野美宇(22)が在籍し、さらに同学年で1月の全日本選手権ジュニア女子シングルスを制した張本美和(14)もいる。自らも将来の五輪出場の夢実現へ、レベルの高い素晴らしい環境の下で練習に励んでいる。
プレースタイル(戦型)は「右シェーク異質攻撃型」
留萌で芽吹いた才能が強豪チームで大輪の花へ育とうとしている。大阪国際招待での目標は「優勝すること。サーブから3球目、レシーブから4球目の展開をしっかり決められるようにしたい」と頂点を見据える。プレースタイル(戦型)は「右シェーク異質攻撃型」。木下卓球アカデミーの渡邊隆司GM(42)は「バックで変化をつけながら、最後はフォアハンド、ワンハンドドライブで得点していく」と、櫻井のストロングポイントを説明する。
昨年12月には、ラケットのフォア側ラバーを日本製から中国製に変更。櫻井は「日本のラバーだと、ちょっと威力が出なくて相手が取りやすくなってしまう。しっかりとパワーを出すために、中国製に戻した。異質(ラバー)を生かしたプレー。みんなやりづらいというか、取りづらい」と持ち味を存分に生かし、大阪での初陣に挑む。
チームはレギュラーシーズン1位でのプレーオフ進出決定
櫻井にとっては思いがけないTリーグデビューだった。12月3日、トップおとめピンポンズ名古屋戦。試合数日前に、ダブルスのメンバーに予定されていた平野がコンデョション不良で欠場が決まり大役が回ってきた。ダブルスは4戦するうちの第1マッチで、結果はゲームカウント2-0の勝利。勢いに乗ったチームは3-1で勝ち点3を獲得した。「テレビとかで見ていて憧れの舞台だった。そこで1勝できたことは本当に自信になりましたし、良い経験になりました」。ここまではこの1勝のみだが、2月11日に決めたレギュラーシーズン1位でのプレーオフ進出に、チームの一員として多少なりとも貢献した。
21年4月に開校した木下卓球アカデミーの2期生
木下グループは男女2チームが、Tリーグ初年度の2018年から参戦。そして、日本オリンピック委員会が運営するJOCエリートアカデミーのような若手育成組織を目標に、21年4月に木下卓球アカデミーが開校した。櫻井はトップアスリートコースの2期生として昨春、親元を離れて入校した。
渡邊GMとの出会いは、留萌東光小6年時の秋。福島・郡山市で行われた小学5、6年生対象の「ホープスナショナルチーム選考合宿」の東日本大会。当時、ジュニア世代の日本代表監督を務めていた渡邊GMは「会場でお父さんと練習しているときに、その台だけスピード感がちょっと違う印象を受けた。すごく運動神経も高くて、ポテンシャルも高かった」と振り返る。
留萌中1年時の秋に木下グループからオファーが届いた。ところが「その時は入る自信が本当になくて。自分なんか入っていいのかな」と迷っていた。それでも決心したのは兄・倭さん(明大1年)がいたからだ。「自分は弱いから行かない方がいいのかなと思っていたけど、お兄ちゃんが『弱いから行った方がいい』って言ってくれて、覚悟ができた」という。
昨年1月、張本との試合は0-3敗退も「それなりのプレーをしていた」(渡邊GM)
〝御前試合〟も、しっかり内容が伴った。昨年1月の全日本選手権ジュニア女子シングルス、張本との2回戦を渡邊GMと東京五輪男子日本代表監督で木下グループの倉嶋洋介総監督(46)が視察。渡邊GMは「1ゲーム目は、ちょっとリードしたりもしてたんです。実力が違うので、最終的にはひっくり返されて0-3で負けてしまったけど、それなりのプレーをしていた」と評価。晴れて4月から入校し、10月にはTリーグに出場できる登録も済ませ、トップチームの一員となった。今では櫻井も「設備も整っていて、一番、自分にとって強くなれる環境」と、背中を押してくれた家族に感謝する。
練習時間外にも自主練に励み卓球漬けの毎日
その環境は、国内トップクラスだ。練習場所は木下グループが神奈川県内に保有していた介護施設の一部を卓球専用に改装。アカデミー生は提携先の星槎中に週3回通いながら、平日16時過ぎから夕食を挟んで21時までの2部練習。学校がない日は、午前と午後の合計6時間以上が練習という卓球漬けの毎日を送る。さらに櫻井は練習時間外にも自主練に励むなど、他の選手に追い付き追い越そうと、コツコツと努力を積み重ねている。
仮想・伊藤美誠となることでトップ選手との練習が増える
木下アビエルには、東京五輪女子団体銀メダリストの石川や平野が所属。Tリーグには6人が帯同し4人が出場。櫻井はリーグ終盤から対戦相手に似せた仮想選手として帯同する機会が増えてきたという。2月12日の日本生命レッドエルフ戦も相手に異質型がいたために、練習相手に指名された。渡邊GMは「(櫻井に)伊藤美誠の技術を全部、真似しようと言っている。そうすることで、うちのトップ選手が伊藤と対戦する前に櫻井とやりたいとなる。そうすると、強い人と練習する機会が増えますからね」と、育成組織ならではの強化プランを説明する。
櫻井も「伊藤さんは、相手の球を利用するのがとても上手で、その技術を練習してます。回転がかかっている球に対して、いつも通り強く打ってしまうと、当たってしまってミスが多くなる。相手の球のスピンを利用して、小さく振ることで、安定するというか、確実に入れることができる」と、仮想・伊藤となるよう工夫しながら技術向上に取り組んでいる。
最大目標は「世界で活躍できる選手」 一歩先の張本には「毎日刺激を受けてます」
選手としての最大の目標は「世界で活躍できる選手」になること。その一歩先を進んでいるのが張本だ。「本当に練習から集中して一球一球の意識が高くて。あと、すごい楽しそうにやっていて、毎日刺激を受けてます」と背中を追いかけている。「ずっと自信がなかったけど、Tリーグとかいろんな経験をして自信がついた。その自信をしっかり持って、いろんな大会に挑んでいきたい」。実力も精神面もひと回り成長した伸び盛りの14歳が、同世代と切磋琢磨しながら、厳しい競争を生き抜いていく。