江越 右手首骨折でもサヨナラ打「心は折れなかった」
■オープン戦 西武1ー2日本ハム(3月15日、エスコンフィールド北海道)
九回1死満塁で殊勲の一打 試合後に新庄監督が骨折の事実を公表
骨が折れていても打つ。日本ハムの江越大賀外野手(30)が15日、エスコンフィールド北海道で行われた西武とのオープン戦に途中出場し、九回1死満塁でサヨナラ打を放った。試合後、新庄剛志監督(51)は、江越の右手首が骨折していたことを公表。手負いの元虎戦士が痛みを抱えながら執念で〝新球場1勝〟をもたらした。
一つの事実が明らかになった。サヨナラ勝ちの余韻が残る中、会見場に姿を現した新庄監督が右手首を差し「今まで黙っていたんですけど、彼(江越)は本当に強い選手。実は骨折しているんですよ。骨折していて出場をさせている」と説明した。2軍降格やリハビリ専念の措置は取らず「本人に骨折していようがやれるという気持ちがあれば、期待に応えたい」と1軍に帯同させていた。
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新球場に降り注ぐファンの歓声 「めちゃくちゃうれしい」
江越はこの日、ベンチスタート。八回に代走で出場し、同点の九回1死満塁で打席が回ってきた。絶好機で指揮官に耳打ちされた。「ホームランを打とうか」。キャンプ中、コンパクトなスイングを徹底するよう指導を受けてきたが、この局面は逆の本塁打指令。思わず、笑ってしまいそうになったが「しっかり甘い球を打とう」と腹を決めた。
追い込まれてから、西武・宮川のフォークを左翼線にはじき返した。新球場でのオープン戦2試合目で、劇的な勝利をゲット。本拠地のファンの歓声が降り注ぎ「めちゃくちゃうれしい」と喜びをかみしめた。
1日の打撃練習で骨折もプレー続行を決断
3月1日、実戦形式の打撃練習でポンセの投球が右手首を直撃。思わず、悲鳴を挙げていた。この時点で病院での検査を勧める声もあったが、かたくなに拒否した。
江越は負傷時を回想した。「球が当たった時に『これやばい』と思った。病院に行ったら(骨折が)バレそうだなと思ったので、大丈夫ですと言った」。3日後、チームドクターと相談し「もし異常があっても絶対にやります」と訴えた上で検査。骨折が判明し「やっぱりそうなんだと思いましたけど、心は折れなかった」とプレー続行を決めた。
プロ9年目の30歳 レギュラー奪取へ新天地で背水の覚悟
昨オフ、トレードで阪神から加入した。プロ9年目の30歳。キャンプ中から外野手争いでアピールに成功し、開幕1軍、レギュラーが手の届くところまできていた。ここで離脱するわけにはいかなかった。
毎食後に痛み止めを飲んでグラウンドに立っている。痛みは少しずつ和らいでいて「最初の方は(バットを)握る動作で痛かったんですけど、意識して牛乳を飲んだり、チーズ食べたり、ひじきを食べたりしている。だいぶ良くなっています」と照れくさそうに笑った。シーズン開幕まであと2週間。背水の覚悟を持つ男は、勝利に執着し、自らの生きざまを貫き通す。