【侍ジャパン帯同記】道スポ評論家の鶴岡慎也氏 ブルペン捕手として〝壁〟に徹するだけ
準決勝進出の歓喜の瞬間はブルペンのモニター越しに
野球日本代表「侍ジャパン」は16日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準々決勝(東京ドーム)でイタリア代表に9ー3で勝利し、準決勝が行われるアメリカ行きの切符を手にした。裏方として帯同する元日本ハムの鶴岡慎也氏(41)は、歓喜の瞬間をブルペンのモニター越しに見届けた。列島を熱狂させた夜。その舞台裏を道スポWEBに語った。
侍として戦うのはこんなに大変なことなんだと痛感する日本での5試合
僕はゲームセットまでブルペンにいて、試合後にみんなでハイタッチを交わしました。ここが1つの山場、ポイントだと思っていたので選手もホッとした表情をしていましたね。1次ラウンド初戦の中国戦から選手1人1人が日の丸を背負う重みを感じていました。いつもなら見逃すボールに手を出したり、絶対に捉えられるボールをファウルにしてしまったり。侍として戦うのはこんなに大変なことなんだと痛感する5試合でした。
大きなプレッシャーが掛かる中でも最高の調整をしてもらいたいー。投手に気持ちよくマウンドへ登ってもらうことだけを考えていました。準々決勝ではダルビッシュ投手のボールも受けました。一流の投手だけが集まっているので、それぞれが自分で考えて準備をしてくれます。僕らが個性を出す必要はありません。ブルペン捕手として〝壁〟に徹するだけでした。
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実力通りにならない国際試合 WBCを通してあらためて野球の難しさ、奥深さに触れる
実力通りのプレーができれば日本の方が強いと思っていましたが、実力通りにならないのが国際試合です。1次ラウンドのチェコ戦では125キロの真っ直ぐと110キロのチェンジアップで大谷選手を抑える投手もいました。野球というスポーツは技術以外にも大事なものがあるのだと考えさせられました。やっぱり実力だけ、メンタルが強いだけではダメ。いろいろな要素を複合的に持っていないと結果にはつながりません。WBCを通してあらためて野球の難しさ、奥深さに触れています。
大谷は相手と戦う上でも、味方チームに対しても好影響を与えてくれる
大谷選手は大舞台でも実力通りの力を出しています。侍ジャパンだから、WBCだからといって特別な行動はしていません。いつも通りの準備をして試合に入る。ルーティンを崩さず、きっちり成績を残せる技術とメンタルはさすがです。どんな状況下でもずば抜けた能力を発揮できるスター性を間近で見ています。1ファンの気持ちになってはいけませんが、同じ時間を過ごす中ですっかり魅了されています。一流選手が集まるチームの中でも特別な存在です。相手と戦う上でも、味方チームに対しても好影響を与えてくれています。
伊藤は大舞台のどんな状況でも普通にプレーできることが何よりもすごい
イタリア戦の2番手で登板した伊藤選手は、しっかり自分の仕事をしてくれました。2点差に迫られてなお2死一、三塁。ちょっと嫌な雰囲気でしたが平常心でマウンドへ向かい、彼の持つ素晴らしいボールを投げてくれました。試合が重くなりそうなところで抑えて、いい形で次の投手にバトンを渡す。どんな状況でもナーバスになることなく、大会期間を通して僕の知っている伊藤大海のままでした。普通にプレーできることが、何よりもすごいことですね。
あと2勝。侍ジャパンが世界一になれるように全力でサポート
日本ラウンドを終えてアメリカへ向かいます。ものすごく良い雰囲気で野球ができているので、このまま選手がやりやすい環境を整えられたらと思います。今大会では初めて裏方を務め、スタッフの方々がどんな気持ちで試合を見ているのかが分かりました。僕自身、とても素晴らしい経験ができています。これ以上レベルが高い大会は他にありません。僕の野球観も変わってきていますし大きな財産になると確信しています。あと2勝。侍ジャパンが世界一になれるよう全力でサポートしていきます。