財産となったWBC制覇 「なにがなんでも抑えるという気持ちを忘れない」
侍ジャパンの一員としてWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)優勝に貢献した日本ハムの伊藤大海投手(25)が24日、チームに合流した。首脳陣と相談の上、28日に平塚で行われるイースタン・リーグのDeNA戦に先発することが決まった。この日、エスコンフィールド北海道で練習に参加した後、報道陣の取材に応じた。
一問一答は次の通り。
―日本ハムに戻ってきてどんな気持ちか
「なんか家に帰ってきたような感じというか、はい、そんな感じです」
―新球場の印象は
「最初にグラウンドに入った時に、すごい芝の香りがしたり。すごいワクワクしましたし、早くこのマウンドで投げたいなと思いました」
―WBCはどんな大会だったか
「宮崎キャンプから僕自身、勉強になることが多かったですし、あらためて野球の素晴らしさを感じて、野球がもっと好きになりました。それをシーズンにつなげていけたらと思います」
―印象に残ったシーンは
「全部が印象に残っているんですけど、やっぱり決勝のマウンドに上がったのは、すごくうれしいことでしたし、そこでしっかりと自分らしく攻められたというのは、良い経験になったなと思います」
―緊迫した場面での心境は
「マウンドに上がる時は、やってやるぞという気持ちが一番だったんですけど、今までに感じたことのない球場の雰囲気の中で、いつも以上に落ち着いていた。最後、インコースのサインがきた時も、いつもだったら余計なこと考えて、ここで決めようとか思っていたんですけど、あの時は自然と、力を抜いた時の方が球がいくよと自分に言い聞かせることができていた。それがしっかりはまって、良い形で投げ込めたと思います」
―緊張はしていたのか
「緊張するのはブルペンからマウンドに向かう時。マウンドに立ってからはもう目の前のことに集中していました」
―大リーガーとの対戦で感じたことは
「展開的には一発は気をつけなきゃいけない場面だったんですけど、そこに立てて、対戦できる喜びを感じながら、ワクワクしながら。こっちはもう挑戦者だったので、一球一球魂を込めて投げるだけでした」
―ダルビッシュの存在は大きかったか
「キャプテンはつくらないということでしたけど、キャプテンのような感じで。みんなのお兄ちゃん的存在で、いろんな選手に目をかけてくれて、気を遣わせすぎたのかなと思うくらい、いろんなことをしてくれた。すごく感謝していますし、野球界のためにという思いもすごく伝わってきて。それを若い選手がどんどん力に変えていって、最終的に良い結果になったので、みんなダルビッシュさんには感謝していると思います」
―大谷と接して
「パワフルというか、言葉一つとってもすごくパワーを感じました。みんなそうですけど、野球が大好きなんだなと。そういうメンバーの集まりだったので日々、新鮮な時間を過ごしていました」
―あらためて日本ハムOBでもある2人から学んだことは
「あれだけメジャーで活躍していても向上心があり、野球が大好きな気持ちを忘れず、もっとうまくなりたい、もっとボールを速く投げたい、もっとすごい変化球を投げたいと毎日、いつでも考えていた。そういう姿勢を僕も大事にしたいなと思いましたし、それが野球選手のあるべき姿なんじゃないかなというのは考えました」
―栗山監督の存在は
「いつも通りというか、僕が新人時代にグラウンドにいた時と同じように接してくれました。すごく心強かったというか、いろんなことも話しやすかったです。最後、ああいう形で起用してもらってうれしかったです」
―今後に生かせることは
「帰国した時にも言いましたけど、今までの大会に出た先輩の背中を見て僕たちはここに立てたので、そういう思いをくみながら。次の大会ももちろん出たいですし、僕があの時に感じたような感動、勇気を(もらったプレーを)少しでも体現できたらなと思う」
―開幕まで1週間を切った。今季の意気込みは
「本当に切り替えて。WBC自体は終わったことなので。その経験を生かしながら、満足することなく。今年、ファイターズが優勝すると新庄監督がずっとおっしゃっていて、そこに向かって、その優勝に向けた大事な一つのピースになれたら」
―気持ちの切り替えは難しくないか
「先発として試合に出ることがすごく好きなので。長いイニングをこれから投げられることがワクワクします」
―新球場のマウンドの感触はどうか
「印象としては硬めなのかなと。スパイクの歯を刺していないので何とも言えないですけど、マウンドから見た景色はすごく良かった。グラウンドを一周見渡して、ここでいよいよ投げられるんだなとイメージしていました。ここに北海道のファンの皆さまが集まって、プレーできると考えたら、ずっとファイターズを見てきた人間としては感慨深いものがありますし、1年目のシーズンに携わるということは当たり前のことではないですし、特別な思いを持って今シーズンに挑めたらなと思います」
―新庄監督にあいさつした時に、大笑いしていたが
「(指示された通り)フォアボールを出しませんでしたと」
―約束を守ったと
「(四球を出したら)ストレートパーマという約束をしていたので、良かったねと言ってもらいました」
―時差ぼけは
「そんなになかったです。朝起きてから、ちょっとまだ眠たいなという感じがありましたけど。しっかり寝られてはいる。きょう良い感じに汗をかいて、しっかり寝られると思います」
―自宅にはしばらく帰っていなかったと思うが
「久しぶりに北海道に帰ってきました。(前回1月中旬の帰宅時に)焦って出て行ったのか、部屋がだいぶ汚かった…。入ってがっかりしました(笑)。なんか泥棒が入ったぐらいの散らかりよう。どれを洗濯したのか、していないのか、分からないぐらい(笑)」
―WBC決勝の前に大谷が「あこがれるのをやめよう」と。対戦前と後で大リーガーに対する気持ち方は変わったか
「…とは言っても、当の大谷さんだったり、ダルさんたちにあこがれちゃっているよ、と思いながら聞いていましたけど(笑)。でも、もちろんそうだと思いますし、試合になったら対戦する上で関係ないことなので。チームとしては浮ついていたところをピシッと、試合に入る前に大谷さんが締めてくれたのかなと感じました」
―今後はすごい選手に対しても気後れしない
「それはそうですし、日本でも全く同じだと思う。相手に対して最大限の敬意を持ちながら、あこがれてはいけないというか、このバッターすごいな、じゃなくて、何が何でも抑えるんだという気持ちは絶対に忘れてはいけないと思いますね」
―日本ハムの後輩に経験を伝えていくことも
「もちろん。そのための時間でもあったと思います。ダルビッシュさん、大谷さんに聞いたことを日本に戻って浸透させるということを2人も望んでいると思うので。伝えられるべきところはしっかり伝えたい」
―再会したチームメートにはどんな声をかけられた
「いつも通り。おめでとうと。本当に(侍ジャパンでは)よそ行きだったので。家に帰ってきた感じ。お兄ちゃんのような加藤(貴)さん、上沢さんがいたり。弟のような後輩がいたりという感じなので。気を緩めず、シーズンに向かってすぐなので、また頑張りたい」
―ポンセからすしをねだられていたが
「たぶん、優勝したから振る舞ってくれ、みたいな感じだったと思うんですけど、ポンセの方が(年俸を)もらっているよと思いました(笑)」
―どの試合も完璧に抑えた。なぜ、あれだけマウンドで堂々と投げられるのか
「やるべきことをやってきた。試合に入るに当たっていろいろな準備を確立できた。今年は準備にこだわってきた。自分自身が毎回その準備をクリアすることで、すごくモチベーションというか、ぶれることなく1球目から集中できた感じだった。あとはブルペンで厚沢コーチが『だいたいこの辺にあわせてくれ』と的確な声があった。それに合わせるだけだったので、そこがすんなり入れた要因かなと思います」
―侍ジャパンで活動中も野球ノートを書いたか
「しっかり書きました。普段の練習中も投手同士の会話が飛び交っていた。いろんな感覚があるんだな、と。それを書き留めていた。どういうことなんだろうって分からないことは、結構年下の子が多かったので聞きました」
―大事な財産に
「そうですね。ああいう経験はなかなかできない。これだけの期間、活動できるのも珍しい。いろいろな情報を自分の引き出しにして、困った時にチョイスして使えたら」
―金メダルは
「メダルは手で持ってくるべきだったけど野球リュックに入れたまま、荷出ししてしまった(苦笑い)」