【侍ジャパン帯同記】道スポ評論家の鶴岡慎也氏 日本野球のさらなる進化を予感
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WBCを制覇した侍ジャパンの舞台裏を道スポWEBに語る
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を制覇した野球日本代表「侍ジャパン」に裏方として帯同した鶴岡慎也氏(41)が、激闘の舞台裏を道スポWEBに語った。グラウンドやロッカールームで侍たちと過ごした日々を振り返った鶴岡氏は、日本野球のさらなる進化を確信している。
米国ラウンドの準決、決勝は完全アウェーで9割8分は相手ファン
渡米後はメキシコ戦、アメリカ戦とも完全アウェーで9割8分は相手ファンという感覚でした。盛り上がり方も日本とは全然違う、独特の雰囲気の中で選手は試合に臨みました。準決勝のメキシコ戦は3ランで先取点を奪われ、相手先発のサンドバル投手のデキも抜群。正直、厳しいかな? と思えるほど苦しい展開でした。
そんな劣勢をはね返したのは吉田選手の同点3ランでした。メジャーリーガーらと1カ月近く一緒に過ごす中で感じたのは、一流選手はどんな状況下でも一定レベルのメンタルを保つ術を持っていること。技術はもちろん、メンタルコントロールに優れた選手が大舞台で活躍するのだと勉強させられました。
決勝戦は栗山監督と大谷選手の試合前スピーチが大きな勇気を与えてくれた
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迎えたアメリカとの決勝戦。先発メンバーを発表する直前、栗山監督はスタッフを含めた全員が集まる場で「誰でも名前を知っている選手と対戦することになるけど、そういうチームに勝つために、今ここにいるメンバーを選んだ。俺は絶対勝てると信じている」という話をしてくれました。その言葉がチームに絶対勝てる、勝つんだというマインドを植え付けてくれました。話題になった大谷選手の「憧れは捨てましょう」の名セリフは直接聞けませんでしたが、監督とチームリーダーの声は大きな勇気を与えてくれました。
米国戦では日本の投手力の高さを再認識しました。アメリカの野手はトラウトやゴールドシュミットら超豪華メンバー揃い。大会を通じて打線自体が好調でした。その中で日本の投手陣はかわす投球ではなく、パワーピッチングで立ち向かいました。直球で差し込み、変化球で仕留める。初対戦は投手が有利とはいえ、強打者たちを真っ向勝負でねじ伏せる姿は頼もしく映りました。
スモールベースボールを掲げていた一昔前から日本の野球は大きく変わりつつある
日本の打者たちも米国のパワーピッチャーに力負けしないレベルに達してきました。決勝戦も村上選手と岡本選手の本塁打で勝利。一昔前まではスモールベースボールを掲げて足や小技を駆使して勝つという方針でしたが、日本の野球は大きく変わりつつあります。
米国ラウンドの期間中にロッカールームで印象に残る出来事がありました。山川選手、村上選手、岡本選手らが大谷選手にトレーニングに対する考え方や内容を聞き、質問に答える場面を遠巻きに眺めていました。日本球界を極めている本塁打王や三冠王が、大谷選手が放つ異次元の打球を目の当たりにして「このままではダメだ。もっと上に行くためにはフィジカルを鍛えなければいけない」というマインドになっていました。
大谷選手とダルビッシュ選手が残したものは日本球界にとって大きな財産
山川選手や村上選手はあれだけ大きな体でありながら、これまで本格的なウエートトレーニングに取り組んだ経験がないようです。裏を返せば、そこは伸びしろとも言えます。大谷選手の考え方を各選手がチームに持ち帰り、積極的に筋力トレーニングを行えば、その姿を見た同僚の選手たちも大きな刺激を受けることになります。大谷選手が落とし込んだトレーニング方法は日本のトップスラッガーたちを経て、やがて球界全体に波及するはずです。
もちろん投手においても同じ好循環が生まれます。大会期間を通してダルビッシュ投手は変化球の投げ方や、トレーニング法、サプリメントの摂取、コンディションの整え方などを若い投手たちに伝えていました。ダルビッシュ投手が成功と失敗を繰り返しながら開拓した道のりを、未来ある後輩たちは最短ルートで進むことができます。2人はWBC優勝という輝かしい栄冠をもたらすと共に日本球界に大きな財産を残してくれました。
この上ない貴重な経験となった侍ジャパンへの帯同 後輩達とのショットはインスタで
最後に少しだけ自分の話をします。優勝を祝うビールかけの直前。少しだけ空いた時間を見計らって、ダルビッシュ投手や大谷選手らに写真撮影をお願いしました。僕は裏方なので極力目立たないよう心掛け、大会期間中はSNSの利用を控えていました。少し照れくさいのですが、優勝後に後輩たちと撮った写真は特別なワンショットになりました。インスタグラムにアップしていますので、ぜひご覧になってください。
日本代表への応援、本当にありがとうございました。世界一奪還を果たした選手たちの奮闘は素晴らしく、私自身もブルペン捕手としてチームに帯同することで、この上ない貴重な経験をさせてもらいました。関係者、ファンの皆様へあらためて御礼申し上げます。(おわり)