【西川薫】変わる高校野球 今夏からベンチ入り20人に拡大、来春から低反発金属バット導入
2023年から24年にかけて、高校野球界に大きな変革がやってくる。なかでも北海道は他都府県に比べて大きく変貌を遂げる。
日本高野連は、今年の全国高校野球選手権(阪神甲子園球場)のベンチ入り人数を従来の18人から20人に拡大する。これは2003年以来20年ぶりの変更だ(コロナ禍対応による20年夏の甲子園交流大会を除く)。近年の暑さ対策、20年選抜から導入された1週間で500球の投球数制限の回避や故障予防などが主な目的とされている。
秋季全道は従来通り18人
道内でも今夏の支部予選から20人に拡大することが13日に行われた北海道高野連の理事会で承認されたが、現段階では秋季全道は従来通りの18人を予定。また、北海道では22年春の大会から登録メンバーを25人に拡大。試合ごとに18人のベンチメンバーを変更できるようになっていたが、これも継続される。また、今春から継続試合を導入。延長タイブレークの適用回数も13回から10回に変更となる。
記者の高校時代は、支部大会は18人で道大会で15人に絞られていた。3年間スタンド組だった身としては、当時も20人枠だったら1度くらいはベンチ入りのチャンスがあったのかなぁなどと、30年以上前の事が脳裏を横切った。
最大径を64ミリに、打球部の金属の厚みを4ミリ以上に
2つ目は、24年の選抜大会から導入される新基準の金属バットだ。高校野球では1974年に金属バットが登場し、来年で50年を迎える。日本高野連のHPによると、主な目的は特に投手の負傷防止。近年は打撃戦が多く、投手の負担が増えているという。具体的には、バットの最大径を67ミリから64ミリに制限。さらに打球部の肉厚が3ミリから4ミリ以上に変更。ほっそりした見た目は、木製に近いようだ。これにより、打球が当たってたわむ「トランポリン効果」を減らし、打球初速を3.6パーセント低下させることで、ピッチャーライナーなどでの不幸な事故を未然に防ぐという。初速が落ちれば飛距離も低下する。競技は違うが、ゴルフの低反発ドライバー導入時と同じような理屈だろう。
複数の販売代理店に話を聞くと、合計10メーカーが販売予定。少しずつ市場に出回り始めたが、いまのところ価格帯は従来品よりも割高だ。23年は移行期のため、秋までは現行基準と新基準のバットの両方が公式戦で使用可能。さらに日本高野連では、全国の加盟校に新基準の金属バットを2本ずつ配布する方針。1本は学校側でメーカーなど選べるため、5月末までに希望を募り、11月以降に配布する計画だ。
再び昔話になって恐縮だが、高校生当時、捕手の難聴予防を主な目的に消音バットが導入。試打用バットが不足していたのか、サポーターの様なものをバットの芯の部分に巻いてティー打撃をしていた。最初は、外野にフライが上がっても、音が鈍いのにぐんぐん伸びて頭を越えて行く打球に慣れるのに時間がかかったのを思い出した。少年野球の複合素材バットの登場時と似ているかもしれません。
すでに札幌第一高では新基準の金属バットを購入。菊池雄人監督(50)によると、実際に試合で使い始めるのはまだ先になるという。また販売代理店によると、アオダモよりも硬いメープル材を使った海外メーカーの木製バットだと、新基準の金属バットと比べて価格は約6割に抑えられるそう。重さも900グラム以上に規制される金属に比べ、850グラム台と軽いモデルもある。さらに先端部をくり抜いた操作性の高いモデルも販売されている。菊池監督は「非力な選手にはいいかも。しっかりと真芯で打たないといけないから、技術が上がってくるんじゃないか。試してみる価値はある」。いち早く情報収集を行い、データを取り、準備を進めてチーム強化に繋げていく。
土、人工芝、天然芝 大会ごとに変わる球場
最後に球場について。春季全道は例年通り、札幌円山を予定しているが、今夏の南北北海道大会の準決勝と決勝は、日本ハムが本拠地として使用する、エスコンフィールド北海道で初めて行われる。現在、道内の高校野球の公式戦で内野が芝の球場を使用している例はない。さらに今秋から選抜甲子園につながる全道大会は内外野とも人工芝の札幌ドーム。人工芝に関しても、釧根支部以外の出場校は、公式戦では初体験となる。
ここまで大会ごとに違う球場で争うことになってくると、重要なのは大会前の公式練習だ。ボールの跳ね方1つとっても、土と天然芝、人工芝では大きく違う。マウンドの硬さ、外野フェンスの跳ね返り、ファウルゾーンの広さもまちまちだ。さらに来春以降は新基準のバット導入で本塁打数が減ることが予想される。打線はそれを補うフィジカルを鍛えるのか、スモールベースボールで立ち向かうのか、いずれにしても各校がどのような戦術や対策を練ってくるのか、今後の注目ポイントになってくるだろう。