単独出場へ異例の決断! 道立高校の札幌あすかぜに指導者未経験のお父さん監督が就任 9人で4年ぶり公式戦勝利へ
昨秋は部員不足で辞退 5月7日からいよいよ春季全道各支部予選がスタート
まもなく球春到来-。春季全道高校野球の各支部予選が5月7日の函館、空知を皮切りに全道10支部で開幕する。昨秋は部員が6人だったために出場を辞退した札幌あすかぜが、今年は9人が揃い単独出場で新チーム初の公式戦を迎える。前監督が今年3月に定年し、代わりに石狩市役所勤務の富木則善さん(51、石狩南高出)が外部指導員として期間限定で監督を務めることになった。道高野連によると、町立の高校で鵡川や知内で例があったが、道立の高校では過去に南茅部であったくらいで極めて異例のことだという。
前監督の勇退から後任監督が決まらず 年明けにようやく富木遊撃手の父に決定
川村裕前監督が昨年夏で勇退。なかなか後任が決まらず、年が明けてから富木監督は同校に息子の昊遊撃手(2年)がいたこともあり、仕事が休みである土日限定でということで大役を引き受けた。教員免許は持たないが、「このままやるとしたら、『全く野球経験のない先生が肩書だけ監督、部長になってやることになります』ということだったので、さすがにそれはちょっと可哀想」と、指導者としては息子の少年野球のコーチを経験した程度であったが、試合にどうしても出たい野球部員たちの意思を汲んで受け入れた。
高校生年代となれば本格的な技術指導も必要となるため、ほぼ素人同然ともいえるが、かわいい部員たちのためにはやるしかない。「9人しかいないのでケガをしないのが一番。高校時代はほぼピッチャーをやっていたので、野手は全然やったことがないから何を教えていい分からないですね。サインを出す練習から家でしてます」と苦笑い。それでも、昔取った杵柄でそつなくノックをこなし、サインを出す仕草も様になってきた。
光股主将は富木親子と少年野球チームで知り合い「野球がうまいのは知っていた」
昨秋は連合チームを組んで出場する選択肢もあったが、前監督の意向もあり出場を見送った。念願の単独出場が叶い、光股悠真主将(3年)は「試合をしたくて入った子たちもいたので、みんなのモチベーションを保つのが大変だった。何のために練習してるのか、試合も目的も無いから分からない中だったけど、1人でもやる気がないと全体的に下がっちゃうので、声を出して、元気を出して、少ない人数でやってきました」と、新入生の加入を信じながら冬場の練習を続けてきた。
光股主将は富木遊撃手と少年野球のチームメートだったこともあり、新監督とは顔見知り。「野球がうまいのは知っていたので、別に心配はそこまでなかった」。平日はマシンを使っての打撃練習がほとんどで、「本当に基礎、基本しかできないけど、富木さんが来てくれる土日だとか、練習試合とか、もう大事にやってます」と、普段は自分たちでメニューを組んでいる。
部員集めと平行して、今年は連合チームでの出場も視野に入れて他校との合同練習も行った。入ってきた新入生は野球未経験者を含めて2人。さらに光股主将が元野球部の3年生に嘆願して再度入部してもらい、ようやく9人が揃って単独出場にこぎ着けた。
練習試合は全敗も「試合ができる喜びを感じながら楽しくやってます」と光股主将
4月には練習試合も3試合行った。結果は全敗だが、「人数が少ないと、できる練習も限られていた。こうやって春になって試合ができる喜びっていうのを感じながら、楽しくやってます」と、光股主将は声を弾ませる。
公式戦の勝利は2019年の夏が最後。「9人しかいないし、人数も実力も他のチームより劣っている。僕たちはこれまでと変わらずに泥臭く必死こいて野球をすることしかできない。勝つことは諦めずに頑張っていきたい」と光股主将。半年遅れの新チーム初陣で、何としても1勝をもぎ取ってみせる。