【コロナからの夜明け】② 新十津川町で野外音楽フェス「SORAON」を主催する永関さん 非日常を楽しめる遊び場こそが閉塞感を打破する
「こんなご時世だからこそ感動を共有できる空間作りが絶対に必要」
9月10日に新十津川町で開かれる野外音楽フェス「SORAON」。株式会社挑戦舎の代表取締役社長・永関博紀さん(32)が主催する。2019年、前身となる「すながわ公園祭」を砂川市で開催。しかし、翌年以降は新型コロナの影響で、企画していたフェスが相次いで中止となった。3年の時を〝我慢〟して、ようやく昨年「SORAON」を作り上げた。2回目となる今回は、さらなる規模拡大を狙う。
8日に新型コロナの感染法上の位置付けがインフルエンザなどと同じ「5類」へ移行し、コロナ禍以前の生活に戻りつつある。永関さんの中でも「プラスしかないです」と今年の「SORAON」に対する期待は大きい。「僕らもコロナ対策の費用で掛かるものがいっぱいあったり、マイナスな部分がすごく多かった」と昨年を振り返った。観客目線でも同様の気持ちを抱いている。「お客さんの心理的にも、やっぱり周りの目を気にしなきゃいけないですし、マスクをずっと付けてなきゃいけない。声も出せない。70%ぐらいの楽しみ方しかできない感じだったと思います。でも、それがなくなることでようやく『最高の空間をみんなで味わおう!』みたいなものが体現できるので、期待しかないです」。
19年に初めて野外フェスを開催したが、翌20年、21年と中止せざるを得なかった。「つらかったです。形にできないもどかしさはありました」。それでも諦めずに昨年は「SORAON」開催にこぎ着けた。関係者含め約3000人を動員。金銭的には赤字に終わったが「こんなご時世だからこそ感動を共有できる空間作りが絶対に必要だと思います。『人生の素晴らしさを感じてもらう機会を作らないと』っていう思いは持っているんですけど、去年の反響は大きかったです」。アーティストとオーディエンスが一体となっている光景こそが成功の証しだった。
5人組ロックバンド「wacci」が出演予定
とはいえ、フェス開催は一筋縄でいかない。過去の実績がないに等しく、出演オファーをしても断られるのが基本だという。それでも自らの思いを文面や言葉に乗せることでアーティストの気持ちを動かすことができる。「とんでもなく熱い〝ラブレター〟を送る」。ストレートに伝えることが永関さん流の口説き方だ。今回の第1弾アーティストでは5人組ロックバンド「wacci」の出演も発表されている。キャスティングが決まると、その次はチケットの売れ行きが気になるところ。「チケットの進捗で悪夢にうなされることもしばしばで、精神的に厳しくなってきます。関係者もとんでもなく多いので、ちゃんと一つのプロジェクトとして成功させなくちゃいけない責任とプレッシャーが強烈。図太いやつじゃないとできないです」と笑った。
2016年熊本地震でのボランティアががきっかけ
エンタメの持つ力を「生きる活力」と語る。フェス開催の思いを抱いたのは16年に発生した熊本地震がきっかけだった。永関さんはボランティアで趣いた際に「復興支援フェスみたいなものをやろうとしたけど、全然能力が足りなかった」と唇をかんだ。その思いが「SORAON」の原点で、昨年は18年の「北海道胆振東部地震」で被災した厚真町民を招待。今年も招待する予定で、さらにコロナ禍で奮闘した「医療従事者の招待枠も作ろうと思っています」と明かした。「人生って捨てたもんじゃないなって思ってもらえる空間がある。(参加するのは)1人でも、2人でも、家族全員でもいいです。多くの人と音楽やグルメを通して一つになる。この空間はいいと思います」。非日常を楽しめる遊び場こそが、コロナ禍の閉塞感を打破するのに必要な場所だ。
イベントHP:https://soraon.jp/
■プロフィール 永関 博紀(ながせき・ひろき) 1990年6月28日、砂川市生まれ。滝川高から小樽商科大に進学。卒業後は大手IT企業に就職し、インターネット番組製作に携わった。2年半で退職し、ロードバイクの挑戦を始める。2018年に日本縦断を達成、今年悲願の米国縦横断を成し遂げた。18年に株式会社挑戦舎を起業し、代表取締役社長に就任。19年には砂川市議会議員に当選。翌20年に歌志内市長選挙に出馬するも敗れた。175センチ、68キロ。家族は両親、兄2人、姉、妹。