道産子の星になる! 将来有望な2人の女子中学生スノーボーダー工藤と石本が飛躍誓う
HPのU15強化指定・工藤とSSの石本がシニアデビュー戦で日本一
道内のシーズンは間もなく終わりを告げるが、スノボ界で今後の活躍が期待される2人の新星がいる。2023年3月に行われた全日本スキー選手権でシニアデビューし、いきなり頂点に立った2人の女子中学生だ。全日本スキー連盟(SAJ)のハーフパイプ(HP)U15強化指定選手に選ばれている工藤璃星(チームホクトスポーツ、札幌北白石中2年)と、スロープスタイル(SS)の石本鈴花(モジェーン、北斗浜分中2年)は、幼い頃から互いに面識があり、共に刺激を受け続ける存在だ。
工藤は4メートル以上の高さを誇るジャンプが武器
3月の全日本選手権。W杯遠征組は不在だったが、若干13歳の工藤が五輪やXゲームでもメダルクラスを狙える難易度の構成を披露し、史上2人目の中学1年生女王に輝いた。2位で迎えた最終滑走。1月のSAJスイス遠征3日目に左鎖骨を脱臼して痛みが残る中、「一番大きな目標にしていた。ここで決めなきゃ」と奮起。HPの壁から4メートル以上の高さを誇るジャンプを武器に、フロント720から入ると、22年北京五輪金メダルの平野歩夢(24)らを指導した工藤の父・佳人(51)さん曰く「国内の女子では大会で成功したことがない」というスイッチスタンスからフロントサイドに横3回転する高難度のキャブ1080を2発目に成功。さらにフロント900、バック540とつないでフィニッシュし、91・5の高得点で初のタイトル獲得。「自分が前からやりたいと思っていたルーティーンを出せて、良い結果だったので、すごい良かった」と振り返る。
来季は世界ジュニアとユース五輪に出場可能 「世界に知ってもらえる滑りしたい」
国際スキー・スノーボード連盟(FIS)のW杯出場には、15歳になる24-25年シーズンまで待たなければならないが、来季の世界ジュニアとユース五輪の出場条件はクリア。ジュニアと言っても、レベルは尋常じゃない。23年1月に世界最高峰のXゲーム女子スーパーパイプで、韓国のチェ・ガオン(14)が史上最年少で優勝した。一時期、工藤は一緒に練習したこともある。「まだオリンピックに出られないのに、出ていた人よりも順位が高かった。世界ジュニアに出るか分からないけど、もし出るんだったら一緒に戦ってみたいし、日本だけじゃなくて世界に知ってもらえるような滑りをしたい」と、世界へ飛び出す日が今から待ちきれない様子だ。
SAJのアメリカ遠征は今月12日から 新たなルーティンの精度磨く
5月12日から約2週間、SAJの遠征でアメリカに渡る。合宿では、練習中のフロント900、バック900、フロント1080、バック1080という新たなルーティンの精度を磨く。「グラブをもっとジャッジに見せられるように。ビデオ判定された時も、ちゃんと掴んでると見られるような練習を」。さらにスピン系ばかりではなく、他の選手がやらないようなオンリーワンの滑りにも挑戦する。
石本は最大の持ち技バック900を封印しながら全日本選手権で史上最年少優勝
工藤の全日本初優勝の5日後、SSで石本も続いた。予選を3位で通過すると、決勝のジャンプセクションではフロント720、バック720で首位に立ち、そのまま逃げ切った。会場となったニセコHANAZONOはシーズン中に毎週末、地元から通う慣れ親しんだホームゲレンデ。こちらもW杯遠征組は不在だったが、最大の持ち技、バック900を完成度不足で封印しながら史上最年少優勝。「自分の実力でも通用するんだなって、ちょっと自信につながった」。続けて「全体的には良かったけど(レールなどの)ジブでもうちょっと難易度を上げることはできたかな」と反省も忘れなかった。
小学生のうちからプロ資格を取得 ゲレンデを自由に滑るのが「気持ち良い」
北斗浜分小4年時からSSに挑戦。大人でも尻込みするようなジャンプ台に「怖いけど、慣れちゃえば楽しい」とハマった。同6年の時、ジャンプで後方に2回転する大技ダブルバックフリップを成功させた。卒業前には「上を目指すのに最初に取っておいた方がいい」と、2度目の挑戦でプロ資格を取得。パークだけじゃなく、ゲレンデを自由に滑ったり、「誰も滑ってないこところに自分のラインをつけて楽しむのが気持ち良い」と、ニセコのパウダーを思う存分に滑り倒した。
ビッグエアもアジアカップ3位の実力 「男の子みたいなかっこいい滑りをしたい」
SSとビッグエア(BA)に出場するが、あくまでメインはSS。今季からFIS大会への出場も解禁になり、来季の明確な目標が見えた。全日本選手権の2日後から、長野・白馬で行われたFISアジアカップ2試合に出場。SSは12位で予選落ちもBAは3位と表彰台に食い込んだ。「来季はSSで優勝を狙いたい。女の子だけど、滑ったら男の子みたいなかっこいい滑りをしたい」と、北京五輪女子BA銅メダルの村瀬心椛(18)に憧れる。
2人はインスタで交流し 共に切磋琢磨 将来のスノボ界を盛り上げる可能性大
石本が小学3年で最初に競技を始めのは、工藤と同じハーフパイプだった。石本は工藤の優勝を「インスタで見ました」と言えば、工藤も「大会とかで一緒になったりして、インスタもつながってます。(私は)スロープ競技じゃないから、情報をあまり知らないけど、携帯を開いてインスタを見た時に一番初めにバンって出てきて、同じ優勝カップを持っていたから、一緒でなんかうれしい、プラス刺激になる」。2人は近い将来、世界のスノーボードシーンを盛り上げる可能性を十分に秘めている。これからの活躍に期待は高まるばかりだ。