【少年野球全国Vナイン 高校最後の夏へ】㊤ 東16丁目フリッパーズで全国優勝した選手たち
小学生年代で道勢初の全国制覇を果たした東16丁目フリッパーズ
2017年夏、少年野球の札幌・東16丁目フリッパーズが高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルドトーナメントで北海道勢として初の優勝旗を手にしてから6年。当時のV戦士が高校最後の夏に向けて今年のシーズンをスタートさせた。道新スポーツWEBでは、選手たちに当時の大会を振り返ってもらいながら、高校最後の夏へ、それぞれの決意を語ってもらった。全3回で紹介する。
エースナンバー背負った長内投手(北海)
まずは、昨秋は全道決勝でクラークに敗れた北海の長内陽大投手と小保内貴堂外野手がリベンジを誓う。一塁で先発した長内投手は「辛い時に、なんでこうなってるかっていったら、負けてることが絶対に理由としてある。何かある度に思い出す」。冬の間「あの負けを忘れるな」を合言葉に、辛い練習を耐え抜いてきた。左翼で出場した小保内は「今は甲子園一択」と言い切った。
フリッパーズでは、エースナンバーを背負った長内だったが、全国大会決勝のマウンドには、ダブルエースの斉藤隼人投手が上がった。長内は一塁。「準々決勝ぐらいから、だんだん疲労がたまってきた。準決勝も投げてはいたけど、万全じゃなくて悔いが残っている」。1回戦で5打数4安打するなど、バットでの活躍が脳裏に刻まれているという。
会心の投球は、全国ではなく札幌支部大会2回戦のことが残っている。「すごい内容も良かった」と、同学年で当時、道内ナンバーワン投手と言われていた石山アトムズの鳴海健臣投手(現札幌大谷高3年)に投げ勝ち、そこから勢いがついて全国の頂点まで駆け抜けた。全国3位になった前年も下級生ながらベンチ入り。「最後はどうしても勝ちたかった」と宣言通りの快挙達成となった。「度胸がついた。あれより大きい大会っていうのは出ていないんで。だから、今投げられてる」と胸を張った。
決勝で反撃の一打を放った小保内中堅手(北海)
小保内は「一番はやっぱり決勝戦です」と、八回タイブレークまでもつれ込んだ兵庫・北ナニワハヤテタイガースとの熱戦を挙げた。0-2で迎えた五回表。先頭の小保内が「もう自分が塁に出るしかない」と、初球を逆らわず逆方向の右前へ。この試合で初めて先頭が出塁。一挙、3点を奪い一時勝ち越しに成功した。卒団式では出席者から「背番号5と5回でラッキーファイブ」と、名付けられるほど、日本一への大きな一打だった。
2人は「甲子園に一番近い」と、名門に進学。1年夏には先輩たちに甲子園に連れて行ってもらった。昨夏は南北海道大会2回戦で、長内とフリッパーズでバッテリーを組んだ佐々木涼斗捕手がいる札幌大谷に、完膚なきまでに叩きのめされ、札幌大谷がそのまま甲子園に出場した。長内は一塁で先発し、最後はマウンドにも上がった。「あの試合、自分も打たれている。(佐々木)涼斗とは対戦はなかったんですけど、チームとして負けている」と悔しがった。小保内は1年秋にベンチ入りも、昨春と夏はメンバーから漏れた。「2年生の悔しい思いをはらしたい。自分は守備が売り。バットでは得点につながるような打撃、ゴロで良いので欲を出さないように」。再び2人で日本一の夢を追いかけ、高校最後のシーズンに突入する。
代打で活躍した植村外野手(札幌第一)
昨春の全道を制した札幌第一に進んだのは、植村隆之助外野手だ。中学2年に進級する2019年春、同校が選抜甲子園に出場。「野球のレベルも高くて、勉強も。両方レベルが高いっていうのは、やっぱり良いこと」と強豪の門を叩いた。昨秋、初めて背番号をもらったが、肋骨を疲労骨折して大会ではスタンドから応援。チームは支部大会代表決定戦で北海に敗れた。「一番は自分が(試合に)出られない。自分の代になって、かなり悔しかった」と、ラストイヤーへ巻き返しを図っている。
埼玉出身。フリッパーズの全国大会では3回戦まで3試合に途中出場。1回戦の長崎・波佐見鴻ノ巣戦で、大量リードの五回無死一塁で代打を告げられた。緊張の全国初打席。「そこで右中間のスリーベースを打った」と、会心の適時打。「すごい良い経験。日本一っていうのは、ナンバーワンで、オンリーワンでもあるので。ずっと目指していた目標を達成できてとても嬉しかった」と思い返した。
今春は同校初の2連覇がかかっている。セールスポイントは打撃。「長打とかはないんですけど、単打でも四球でもいいから、次の打者に繋ぐ打撃。高校野球も残り3、4カ月。ラストスパート。全力でやるしかない」。歴代4校目の連覇を達成し、最後の夏へ加速していく。
全国6試合全てに先発出場した坂本左翼手(札幌南)
道内トップの進学校、札幌南に進んだのが、坂本大河外野手だ。札幌西シニアでは北海の小保内と外野で共にレギュラーとして活躍。中学3年の春には全国選抜に出場した(コロナ禍で同年8月に開催)。当時の仲間の多くが札幌の強豪私立に進む中、「自分は南高に入りたい、勉強やりたい」と文武両道を選択。現在は国公立大への進学を目指している。
札幌南では1年春から背番号8で高校デビュー。昨夏もベンチ入りしたが、秋はメンバー外。今春、再びメンバー入りを果たした。「今はセンターやライトで、打順は6番とか7番が多いです。ただ最近はスタメンだったり、そうじゃなかったり。自分の強みは守備にあります。守備は安定してて送球に自信があります」と、レギュラー定着へアピールを続けてる真っ最中だ。
フリッパーズの全国大会では、左翼で6試合全てに先発出場。なかでも茨城・韮崎ファイターズとの準決勝が鮮明に記憶に残っている。0-1の四回1死二、三塁の好機。ゴロ打ちのサインに、きっちりと遊ゴロを放ち、その間に三走が生還。貴重な同点打を放ち、逆転への勢いをチームにもたらした。「全国で最後まで勝ち上がっていくっていう経験は、小学生ながらではありますけども、それ以降できていないので、やっぱり特別な経験だった」と当時を懐かしむ。
同校が甲子園に出場したのは2000年夏が最後。「あっという間の6年間。もう本当に純粋に、目の前の試合で打席に立てることを楽しみたい。それしかないです。まずはエスコンまで」。南北海道大会の準決勝、決勝の舞台を目指す。
◆東16丁目フリッパーズの全国優勝メンバー(6年のみ)
番 選 手 名(チーム)
① 長内 陽大(北 海-札幌真駒内シニア)
② 佐々木涼斗(札幌大谷-札幌新琴似シニア)
③ 斉藤 隼人(札幌日大高-札幌新琴似シニア)
④ 按田 成琉(東海大札幌高-高知・明徳義塾中)
⑤ 小保内貴堂(北 海-札幌西シニア)
⑦ 大塚 渉夢(東海大札幌高-札幌新琴似シニア)
⑧ 坂本 大河(札幌南-札幌西シニア)
⑨ 植村隆之助(札幌第一-札幌栄シニア)
⑩ 福岡 正規(高知・明徳義塾-同中)
⑪ 園部 新(札幌白石-札幌栄シニア)
⑫ 岡田 晴(札幌光星-札幌手稲ボーイズ)
⑳ 市村 颯唯(道科学大高-札幌真駒内シニア)