宮西 「半分、うつの状態」乗り越え、連続救援登板日本記録 妻の言葉に救われた
■パ・リーグ7回戦 西武4-2日本ハム(5月16日、エスコンフィールド北海道)
延長十回に登板 シビアな場面で1死一、二塁のピンチも後続を連続三振斬り
日本ハムの宮西尚生投手(37)が16日、エスコンフィールド北海道で行われた西武戦の延長十回に登板し、1回無失点に抑えた。デビューからの連続救援登板が823試合に到達。五十嵐亮太氏(43)の持つ日本記録に並んだ。また、歴代登板試合数も同氏と並び、7位タイ。レジェンド級の偉業にも「自分ではすごさがよく分からない。ただ、何か一つ目標になるようなものを残せて、良かったなと思います」と謙虚に言葉をつないだ。
今季15試合目の救援。1点もやれないシビアな場面だった。詰まった当たりの左前打と、バント内野安打で1死一、二塁のピンチを招いたが、動じなかった。磨き上げてきた直球とスライダーのコンビネーションで古賀、児玉を連続三振斬り。グラブをポンと叩き、悠々とベンチに戻った。新庄監督が繰り出したガッツポーズが、やり遂げた仕事の価値を物語っていた。
昨季は50試合連続登板が途絶え 16年のプロ生活で最大の苦難に直面
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リリーフ1本で勝負してきた男が金字塔を打ち立てた。プロ16年目で先発はゼロ。プライドを持ち、光が当たりにくいタフな役回りを率先して担ってきた。
昨季、プロ生活で最大の苦難に直面した。14年連続で50試合以上に登板。小さな故障やコンディション不良を抱えていても、平然とマウンドに上がってきた。ただ、休まず、腕を振り続けた代償は大きかった。とうとう、体と心が悲鳴を上げた。
2度目の登録抹消で張り詰めていた糸がプツリ
登板前、左肘にたまった水を抜き、痛み止めの注射を打つ。それが当たり前だった。「あれも気分を落とす原因だった。拷問と一緒だから」。昨年8月、成績が上がらず、2度目の登録抹消となったところで、張り詰めていた糸がプツリと切れた。何をしていても、気力が出ない。笑えない。「何とか、耐えて支えてきたものが…もう無理や」
「おそらく、自律神経がやられていた」
負けん気が強く、小さなことではくよくよしないタイプ。だから、自らも表れた症状に驚いた。「おそらく、自律神経がやられていた。気分が優れない。何をしても嫌やった。診断を受けたわけではないので、はっきり分からないけど、半分、うつのような状態。周りには笑われて終わったけど」。今だから言える。人生で初めて味わう感覚だった。
支えてきた妻は『頑張って』という言葉が苦痛というのを察してくれた
家族の前では、異変を悟られないように振る舞った。それが夫、父親としての意地だった。ただ、連れ添ってきた妻は気づいていた。いつもは「絶対に諦めるな」と背中を押してくれたが「もう満足したらいいよ」と声を掛けられた。肩の力が抜けた。「オレが弱みを見せへんタイプと分かっているから。『頑張って』という言葉が苦痛やというのを察してくれた」と感謝した。
チームがシーズンを戦っているさなか、無理は承知の上で球団へ、手術を願い出た。球団も覚悟をくみ取り、容認してくれた。その選択は、間違いではなかった。肘の痛みが消えたことで、心を覆っていた闇が少しずつ、晴れた。
400ホールドまであと12 「がむしゃらに獲りにいきたい」
どん底を乗り越え、自信を取り戻した。諦めかけた400ホールドの大台まで残り12。「去年、おととしと状態が悪くて勝ちパターンから外れて、絶対に届かないと思っていた。今はチャンスが目の前にある。がむしゃらに獲りにいきたい」。今季の防御率は0・73。絶対的なセットアッパーが、チームに戻ってきた。
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