伊藤 ヒーローの父と母に届けた エスコンフィールド初勝利
■パ・リーグ9回戦 西武2ー6日本ハム(5月18日、エスコンフィールド北海道)
粘りの投球で7回2失点 新球場での勝利は道産子選手初
日本ハムの伊藤大海投手(25)が18日、西武戦(エスコンフィールド北海道)に先発し、7回117球を投げて8安打2失点。新本拠地で待望の初白星を挙げ、故郷・鹿部町から観戦に訪れた父・清光さんと母・正美さんへ勝利を届けた。
〝勝利の女神〟は伊藤を見放さなかった。1点リードの七回、同点に追いつかれたが、その裏に谷内の中前打で勝ち越し。記念すべき、新球場での道産子プレーヤー初勝利が舞い込んできた。「大々的に書いといてください」とニンマリ。お立ち台にも上がり「なかなか地元北海道で自分らしいピッチングをすることができず、悔しい思いをずっとしてきた。ほっとしました」と表情を緩めた。
命懸けで漁に出る父 野球を好きにさせてくれたのも父
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新庄監督デザインの襟付きユニホームを試合で初めて着用した。コンセプトは「野球がうまいヒーロー」。伊藤にとっての〝ヒーロー〟は、この日スタンドから応援してくれていたタコつぼ漁を営む父・清光さんだ。
漁師の仕事は、まさに命懸け。「海で仕事している以上、常に危険は近くにある。本当にかっこいいなと」。一家の大黒柱として家族を支える、強くたくましい背中を見てきた。小さい頃、野球を好きになるきっかけを与えてくれたのも父だった。スポーツ好きの清光さんは、早朝の漁を終えて米・大リーグ中継を見るのが日課。学校から帰ってきた伊藤も一緒になって、イチローや松井秀喜のプレーに胸を躍らせた。
誕生日に贈ったスニーカー 今では応援観戦に来る時の〝勝負靴〟に
プロ入り後、父と直接連絡を取り合うことは多くないが、1月の誕生日には贈り物をする。昨年は「免許証とか保険証をなくすので全部一つに入れられるように」とクラッチバッグをプレゼント。今年はナイキのスニーカーを贈った。白と黒のスタイリッシュな一足は、父が右腕の試合を見に来る時にだけ履く〝勝負靴〟だ。
あふれる北海道愛 「道産子魂を見せていけたら」
2020年秋のドラフト指名直後から、「新球場の開幕投手を務める」を目標に掲げていた。昨年9月に加藤貴が指名され、「北海道出身だからこそ、やりたかったなという思いはありましたね」。その夢はかなわなかったが、今年3月には道産子選手として初のWBC出場を果たし、世界一に貢献した。
「たまに(チームの)道産子選手で北海道愛があるか、ないかの話になったりする。みんなあるって言うので、そこはプライドを持って道産子魂を見せていけたらなと思います」。この日は平日ながらデーゲームとして開催され、道内各地の計23校、約2000人の小中高校生が来場した。「少しでも夢を与えられたかな」。道産子のヒーローとして、背番号17はこれからもたくさんの夢や希望を届ける。