夢はメジャー! 道産ダケカンバ材使用の野球バット実現へ 道内大学・社会人チームにモニター調査
道産アオダモ減少、現在はメープル主流
道産ダケカンバ材を使用した野球用バットの開発が、産学官連携で進んでいる。2022年に北海道と北大、京大のグループが、道の予算で大手メーカーのZETTに、全日本野球協会(BFJ)規格適合のモニター用バットを製造委託。約40本を関西大学野球連盟の龍谷大や社会人野球の東芝などに提供した。23年冬には、道内で初めて札幌学生野球連盟1部の6大学と4企業チームに合計80本を提供。かつて国内球界で主流だった道産アオダモに代わる〝ジャパニーズバーチ〟のバット実現へ注目が集まっている。
メープルに比べて軟らかい
5月21日、2018年から研究を続けてきた旭川の林産試験場・秋津裕志専門研究員(63)ら関係者が、札幌円山球場で行われた札幌6大学春季リーグ戦で選手から聞き取り調査を行った。北大の守田大成内野手(4年)は「練習で使っていたメープルが折れて、ちょうどいい機会だった。メープルに比べて軟らかいので、若干押される感じがありましたが、ボールを捉える感覚はメープルより個人的には好き。メープルは『ガン』って弾く感じで、それに比べると接地時間が長くて狙ったところに打ちやすい。捉えたときはメープルと同じぐらい飛ぶ」と好評価だ。
「接地時間が長いので力は伝わりやすい」
札幌大谷大の笠原陸外野手(3年)も打感の軟らかさを特徴にあげた。「いままでは84センチを使っていたけど、これは85センチ。振り遅れるかなと思ったけど、意外と振れる。少し重いかなと思ったけど、気にならなかった。ちょっとトップバランスですけど、それでも全然気にするほどではなかった。軟らかい感じだったのでボールが乗っていく感じで良かった。接地時間が長いので力は伝わりやすかった。流しても伸びていく感じ」と、メープル材と比べても遜色ない出来だそう。
「通常であれば、パルプやチップなど安く取引」
北海道水産林務部林務局の担当者によると、天然のカンバ材は道内の森林含有量の約9%、7200万立方メートルほどあり、そのうちダケカンバが約8割を占める。林産試験場などのこれまでの研究で、同じカンバ材でNPBやMLBで使用されているイエローバーチと特性が近いという結果が出た。道の担当者によると「通常であれば、パルプやチップなど安く取引されているものが、バットになって付加価値があるものとして使われることによって、北海道の林業が少しでも潤っていくことになれば」と、3年ほど前から広葉樹の一つの使い方として取り組みが始まったという。
田中賢介さんが2019年に数試合使用
NPBで道産ダケカンバ材を使ったバットは、元日本ハムの田中賢介さん(42)が引退する2019年8月に秋津さんらが10本提供。9月14日からのラスト10試合で実際に使用された。残念ながら、翌シーズンからNPB規定が変更になり、現在はイエローバーチやメープルなど4種類の樹種に限定されており、ダケカンバは含まれていない。秋津さんは「今年度、10本でも20本でもいいので、なんとか商品化したい」と意気込む。アマチュア球界での使用実績を積み重ね、NPB公認につなげていきたい考えだ。
夢はNPB公認からメジャーへ
現在、MLBでは複数の日本人選手が、イエローバーチ材のバットを使用。秋津さんは「ジャパニーズバーチが、日本の選手を通じて、メジャーでも使われたらいいな」。北海道から世界へ、壮大な夢に向かった取り組みは続く。