涙であふれた引退試合 佑魂の7球
■日ハム4-3オリックス(17日、札幌ドーム)
佑ちゃん劇場、閉幕―。日本ハムの斎藤佑樹投手(33)が17日、札幌ドームで行われたオリックス戦で現役最後の登板を終えた。1点リードの七回に登板し、打者1人に7球を投げて四球を出したところで降板。ベンチに下がると、今季限りで退任する栗山英樹監督(60)からの言葉に号泣した。チームはそのまま4―3で勝ち、試合後のセレモニーでは仲間たちの手で5度宙を舞った。「野球とは最高の仲間との架け橋」と名言を残し、背番号「1」が11年間の現役生活に別れを告げた。
現役最後の登板を終えて栗山監督に声を掛けられると、斎藤の頬を涙が伝った。「今、記憶にないんですけど言葉が響いた。プロ野球選手として野球をするのは最後なんだな」。泣かないと思っていたが、ベンチでの温かい言葉に、自然と涙があふれてきた。
優勝争いをしているオリックス相手に、最後の真剣勝負に挑んだ。「勇気100%」の登場曲が流れ、1点リードの七回から2番手でマウンドへ。全力で投じた7球目の125キロのツーシームは外角低めにわずかに外れ、結果は四球。「悔しかった」と天を仰いだ。
温かい拍手に包まれる中、帽子を取ってスタンドに一礼しながら降板。「最後にチャンスをいただいて、ファイターズの一員として投げられて幸せな気持ちです」と感慨に浸った。
11年間の現役生活は「基本的にずっと苦しかった」。栄光に包まれたアマチュア時代とは一転、プロ入り後は度重なるけがとの戦いだった。
2年目の12年秋に右肩関節唇の損傷。昨年10月に右肘靱帯(じんたい)を断裂した。早期復活を目指して手術は受けず、保存療法を選択した。
プロでは前例のないリハビリ。成功して、次の世代に役立てればいいという思いもあった。春季キャンプでは連日、200球を投げ込み。患部に強い負荷をかけて治癒を促し、約9カ月で実戦復帰までこぎ着けた。
復帰後は肩の痛みに悩まされたが、最後まで1軍昇格を諦めなかった。2軍の登板前には、球団アナリストの部屋で相手チームのデータを念入りに確認。短いイニングであっても、対戦する全打者の傾向を情報収集した。
つらい日々を間近で見ていた仲間たちが花道を飾ってくれた。後を継いで登板した堀が、後続をピシャリ。チーム一丸となって1点差を守り抜き、守護神の杉浦からウイニングボールを手渡された。試合後に行われた引退セレモニーのスピーチをこう締めくくった。
「斎藤は持っていると言われたこともありました。でも、本当に持っていたら、いい成績も残せたでしょうし、こんなけがもしなかったはずです。ファンの皆さんも含めて、僕が持っているのは『最高の仲間』です」。
胴上げでは5度宙を舞い、笑顔で球場内を一周。最高の仲間に見送られ、佑ちゃんスマイルがキラキラと輝いていた。(中田愛沙美)