鎌ケ谷発企画「待ってろエスコンF」 第2回は柿木蓮投手
戦力外からの再出発 かつて夏の甲子園を制した右腕の今に迫る
2軍で泥にまみれながら己を磨くダイヤの原石たちにスポットを当てた企画「待ってろエスコンF ~鎌ケ谷チャレンジャーズの今に迫る~」。近い将来、新球場のスターになる可能性を秘めた若きタレント候補の現状を掘り下げる。不定期連載の第2弾は、18年ドラフト5位の高卒5年目・柿木蓮投手(22)。昨年10月に戦力外となり、育成選手として再契約した右腕はいかにして、どん底からはい上がろうとしているのか、聞いた。
背番号が3桁になって変わった意識
―今季は2軍で圧倒的な成績を残している。16試合に登板し3勝0敗2Sの防御率0・39
「ありがとうございます。毎回、調子良くは投げられないので、悪い中でも抑えられているのがいいのかなと思います」
―去年までと変わったところは
「何が5年目で変わったかと言われれば、本当に背番号が(育成の3桁に)変わって、立場が変わって、モチベーションという面では、プロとしてはダメなんですけど、こういう立場になってから上がった。そこが一番だと思います」
納得と悔しさと雪辱を期す思い 現役続行の決め手は「見返してやろうっていう気持ち」
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―あらためて、育成契約を最初に告げられた時の気持ちは
「当然かなと思う自分もいれば、悔しい、なにくそっていう気持ちもすごいありましたし、その2つが強かったので、やるって決めたからには、見返してやろうっていう気持ちしかない」
―現役を続けるかどうかも迷ったか
「中途半端にやりたくないなって。ただ、だらだらと何も考えずにやっているような一年にはしたくなかった。やるならちゃんとやる。毎年みんなそうだと思いますけど、一層気持ちを変えてやりたいなと思っています」
―誰かに相談したか
「一番は親ですね。あとは自分と対話した。僕もプライドはあるので、やるしかない。このまま終わったらダサいですし、今年終わった時に、かっこ良かったなって自分で思えるような1年にしたい。一日一日、きょうで終わりっていう気持ちでやっています。食事も意識して、体にも気を使っています。体の状態は間違いなく今年が一番良い」
良かれと思うものは何でも試す 今年から朝は水風呂にも
―今の一日の過ごし方は
「6時半に起きて、ご飯が7時から食べられるので、30分くらいでお風呂に入って髪を乾かしたり準備して食べる。7時半くらいに部屋に戻って、そこから1時間くらいストレッチして、グラウンドに出る。練習が終わったら、登板が五回以降とかだったら部屋で昼寝して、15分くらい寝て、ストレッチして自分の動画を見る。試合が始まったらウエートルームでトレーニングして、試合に行く感じです」
―朝風呂は毎日か
「絶対ですね。プロ入ってからやり始めて、今はもうやらないと嫌。帰省しても絶対入ります。今年からは、朝に水を浴びるか、水風呂に入るようにしている。先にお湯に漬かってから。集中力が上がるって本で読んだので、どうかなって試しています」
登板前には自身のピッチング動画を確認 投球リズムをチェック
―試合前には必ず自分の動画を見るのか
「絶対ではないですけど、見る日の方が多いです。投球のリズム、このリズムだなっていうのを確認する意味で見ています。自分のiPadにいっぱい入っているので。直近のやつが多いですけど、特別良かったやつを見たり。悪いやつはもう見ないようにしている(笑)。僕は良いやつしか保存していないので。悪いやつはその日に見て反省して、ピュッって捨てます」
プロは体が資本 朝と夜に欠かさないストレッチ
―投げ終わった後は何をしているか
「基本、ジムに行くか、ウエートがない日は初動負荷トレーニングに行きます。(午後)6時半くらいに寮に帰ってきて、すぐご飯を食べて、8時くらいまで休憩して、そこからお風呂に入って、サウナや交代浴をして1時間ちょっとくらいお風呂にいる。9時くらいからは髪を乾かして洗顔して化粧水を塗って、そこからはまた1時間くらいストレッチですね」
―1日でかなりストレッチに時間をかけている
「そうですね。朝はアップ前のストレッチ、夜は寝る前のストレッチ、これは絶対やろうって決めています。もう習慣になりました。ベッドの横にストレッチ用のスペースをつくっているので、そこで」
就寝前に毎日〝ポジティブノート〟 野球で3つ日常で3つを箇条書き
―他には部屋で何をしているか
「寝る前にノートを書いています。ストレッチが終わって、歯磨きして、寝ようかなって時に周りの電気をちょっと暗くして、机のスタンドだけ電気をつけて、ちょっとですけど書いて、終わりです」
―ノートには何を書いている?
「去年までは練習内容を書いて、自分が練習中に思ったことを書いていたんですけど、今年は〝ポジティブノート〟って言っているんですけど、ポジティブになるようなことを文章ではなくて箇条書きにしています。例えば『朝、目覚ましより早く起きられたぞ』とか。自分はどちらかというとあんまり自分のことを褒められないタイプなので、本当にしょうもないことまで書いています。自分を褒める機会が少ないと、モチベーション的にも上がってこない。僕は今年すごいモチベーションを大事にしたかったので、それをやるようにしました。『サウナに入って気持ち良かったぞー』とか、『キャッチボールで暴投を放らなかった』とか、野球選手なら当たり前でしょ、ぐらいのことも書いています。野球で3つ、日常で3つ。6個挙げるようにしています。『夜10時半に寝られて、快眠だったね』とか、自分に話しかけるように書いて、最後に自分の目標、『支配下になる、1軍で活躍する』って書いて終わるようにしています。毎日です」
今年の目標は「後悔しない一年にすること」
―野球の練習以外も積極的に、いろいろなことに取り組んでいる
「僕の今年の目標は、後悔しない一年にすることなので、打たれた時にあれしておけば良かった、こうしておけば良かったって思いたくないので、打たれる日もあれば抑える日もあるしっていう考えで投げている。打たれても自分の球が投げられているならいいし、逆に自分の球が投げられなくて抑えている方が嫌。結果も立場的には大事ですけど、今年は自分が納得いく一年に、本当にしたいので、その思いでやれているのかなっていうのはあります」
―ここまでは納得いく日々を送れているか
「いやー、納得いかない日も、もちろんありますよ。その中でも抑えられているのは結果としてみたら良いことですし、次の試合のモチベーションにもつながるので、それは良いことかなと思います」
求めるのは安定感ではなく圧倒する投球
―支配下への気持ちは、どうコントロールしているか
「意識はもちろんしますし、だから育成の選手の成績ももちろん気になります。けど、僕のイメージですけど、あと残りが2枠くらいで、僕は去年クビになった選手で、じゃあ上げて試しに使ってどうでしょうかみたいな感じだったら、多分上がれないなと思っている。急に1軍で抑えを任せられるなとか、急には無理ですけど、それぐらいの期待度がないと無理だろうなと思ってやっている。そう考えた時に、今の僕は安定して抑えられてはいますけど、圧倒的に抑えられているかって言われたらまだハテナが出てくる。僕の中でもそうですし、多分見てくれている人もそうだと思う。そこを僕がもっと求めるしかない。そこで気持ちがブレたりはしたくないので、ただ自分がやることをやって、それを評価してもらって支配下になるならなる。評価されなかったら、それが僕の運命じゃないですけど、そうなるようになっていたんだなって思うしかない。そこは気にせずに、けど意識はしまくって、そんな感じです」