《鶴岡慎也のツルのひと声》絶対に負けられない試合で見せた加藤貴のゲームメーク能力
■パ・リーグ11回戦 ソフトバンク1ー5日本ハム(5月25日、エスコンフィールド北海道)
主戦の自覚と責任を背負って登板した加藤貴
加藤貴投手に主戦投手の自覚と責任を見た。チームは3連敗中で、同一カード3連敗の危機でもあった。打線も一時の勢いに若干の陰りが見え、ここで負ければ、ズルズルと行ってしまう恐れがあった。シーズン中、絶対に勝たなければいけない試合がいくつかある。私はこの日がその一つであったと感じていた。
そこで6回1失点。決して本調子ではなかった。6回95球。球数も加藤貴投手にしては多めだった。それでも一回を最少失点でしのぎ、その後は無失点。ゲームメーク能力はさすがだ。プレッシャーは相当だったはず。中5日と回復具合も普段とは異なる。そんな中で6回1失点にまとめ、十分に試合をつくった。非常に大きな価値がある。
何度も繰り返される相手との駆け引き 日本ハムバッテリーが見せた工夫とは
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
相手打線との駆け引きも見応えがあった。好打者揃いのソフトバンク。スタメンに左打者が6人並んだ。その左バッターたちはカットボールやストレートを容易に振ってくれなかった。やはり敵もさる者。加藤貴投手への対策を練ってきた。
ただ、女房役の伏見を含めたバッテリーも負けていなかった。これまであまり左打者に投げていなかったチェンジアップを駆使した。一回、柳田を二ゴロに打ち取ったのも、そのボールだった。 読み合い、だまし合い、仕掛け合い。長いシーズン、何度も繰り返される。多少、慎重になりすぎた部分はあったものの、日本ハムバッテリーの工夫が、この日は相手を上回った。
万波が見せた読みと切り替え 右の強打者へ成長中
打線では万波。三回の勝ち越し2ランは大きかった。だが、私はその次の打席に彼の成長を見た。二回、インコースの変化球を仕留めた。多少、詰まりながらでもスタンドまで運ぶパワーとスイングスピードは目を見張る。
本塁打の後の打席。打者は引っ張りたくなる。腕を伸ばして芯で捉えたくなる。気持ち良く振りたくなる。それが習性。それでも五回の次打席、外のスライダー系を反対方向へ持っていった。打球は右中間を抜け、二塁打となった。
内角を本塁打にした。次は外で攻めてくるだろう―。その読みと、打席での頭の切り替え。右の強打者への階段を着実に上っている。