宮西 2年ぶり10H 世代交代にあらがい「奪い返した」セットアッパーの座
■パ・リーグ12回戦 日本ハム2-3楽天(5月28日、楽天モバイルパーク宮城)
通算400ホールドまであと10
日本ハムの宮西尚生投手(37)が28日、楽天モバイルパークで行われた楽天戦の八回に救援し、打者2人をピシャリと抑えて10ホールド目を挙げた。2桁到達は2年ぶりで「今年取っているホールドの数は、自分の中でかなり価値が高いかな」と充実感をにじませた。通算ホールド数は390で、節目の400まであと10となった。
1点リードの八回。かつてと同じように不動のセットアッパーとしてマウンドに上がった。左打者の島内、辰己をわずか7球で料理。首脳陣に課せられたミッションを完璧にこなし、3番手の玉井にバトンを渡した。
これまで10ホールドはただの通過点も 成績不振から脱出した今季は意味合いが違う
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最優秀中継ぎ投手のタイトルを3度、獲得している。プロ生活の大半で、10ホールドは気にとめることもない通過点だった。だが、今年に限っては違う。
2022年が分岐点だった。左肘の痛みを抱えたまま投げ続け、成績不振に陥った。出場選手登録を抹消され、シーズン中だった9月、手術に踏み切った。現役続行すらも危ぶまれるほど、不安に駆られた。1軍入りも持ち場も、何一つ保証されていない状況から再出発することになった。
置かれた状況は一変した。「去年から考えれば、勝ちパターンで投げさせてもらうことはないやろなと。見たら分かる通り、(1軍メンバーが)若い世代になっているわけやし。ちょっと調子いいぐらいじゃ、全く使ってくれないやろな、と覚悟の上で今シーズンを迎えた」
「マイナスからのスタート。キャンプ中から若手より成績を出してきたつもり」
ベテランが世代交代にあらがうためには、有無を言わせないほど、圧倒的な能力、数字を示す必要があった。過去の実績やプライドは捨てた。キャンプ、オープン戦を通じてどんな展開でも気を張り、一球に魂を込めた。結果は付いてきた。抜群の安定感で首脳陣をうならせ「ゼロから…なんならマイナスからのスタート。キャンプ中から若手より成績を出してきたつもりではある。(ポジションを)渡されたというよりは、奪い返したという感覚」と胸を張った。
「一回でも失敗したら交代させられると、常に危機感を持っている」
今季19試合に登板し、まだ1点しか失っていない。防御率は驚異の0・59。それでも、絶対的な地位を確立したとは、思っていない。「一回失敗しても次に取ればいいや、という切り替えは、今はない。一回でも失敗したら交代させられると、常に危機感を持って投げている」。固く閉ざされていた扉を自らの力でこじ開けた。鉄腕の伝説級の挑戦はまだまだ続く。